【倶樂部余話】 No.314  それ、自分で言っちゃダメでしょ (2014.12.1)


 かつて「紳士服の名門・○○屋」と宣伝に謳っていた地元の同業者がいました。とうの昔にすでに廃業しましたが、当時から私はこの表現に違和感を覚えていました。自分で自分のことを名門と名乗ることに恥ずかしさを感じないのだろうか、「名門」かどうかはまわりが評価するものだろう、と。
 「うちは創業百余年の老舗で…」という表現も変ですよね。確かに百年続いたのは事実としても、だからって自分のほうから老舗だとのたまうもんじゃない。老舗というのは他人から敬意を込めて呼ばれる尊称だと思うのです。
 「当家は鎌倉時代から続く名家でして」。同じくこれもおかしいです。名家を自称するような鼻高々なお家の方を私は名家とは呼びたくないです。
 こういう文言は人から言われて謙遜しているのが美徳であって、自分から言ったらとたんに不遜な発言に映ります。何でこんなことを思い出したかというと「アベノミクス」です。安倍首相は今回の衆議院解散を自ら「アベノミクス解散」と命名しました。これ自画自賛じゃないでしょうか。語源となったレーガノミクスはもともと記者がジョークで付けたものでレーガン大統領が自ら言いふらしたものではなかったはずです。他に解散理由の言いようがない苦し紛れとはいうものの、我こそは名宰相なり、の過剰な自意識が垣間見えてしまうのは私だけでしょうか。
 それにしても困ったのは、この急激な円安。コツコツ貯めてきた利益の元があっという間に吹っ飛んでしまいました。円安は景気を良くしない、円安を止めよう、と言ってくれるところに一票を投じるぞ、と思っています。(弥)