【倶樂部余話】 No.315  天野浩名大教授のウエストポーチに関する若干の考察(2014.12.24)


 ノーベル物理学賞受賞式のニュース、天野浩名大教授の姿を見て驚きました。
 スーツスタイルに橙色のウェストポーチ。初めて見た時は怒りを覚えました。これは装いに対する冒とくだよ、これが日本人の服装感覚なのかと国際的に疑われてしまうじゃないか、と感じたのです。ところが三日ほど経って、彼が長年これを自分のスタイルとして貫き続けていてすでにその姿が周囲にも定着していると聞くに及び、彼に限ってはそれもアリなのかな、と思えるように気持ちが緩やかに変化してきたのです。
 かつて英国のプリンス、ウインザー公は、泥道でトラウザーズが汚れるのがいやでその裾口を折り返してしまいました。これが裾ダブルの始まりだと言われています。そのほか、紺のスーツに茶色の靴を合わせることも、フェアアイルのセーターをツイードのジャケットの中に着ることも、みんなウインザー公がアリにしてしまったものです。このように、ファッションのおきて破りは、それを犯す人によって○か×かが分かれます。だから、もしスーツにウェストポーチを例えばラルフ・ローレンやポール・スミスがやったら、即OKが出るでしょう。天野教授も今回のノーベル賞で著名人の仲間入りを果たしたわけですから、これはアリでもいいのだろうかと思い至ったのです。
 いやいやとんでもない、そうではなかった。帰国後の教授の記者会見を見てまた驚きました。シャツの袖から白い下着が5㎝もはみ出しているではありませんか。なーんだこの人何の頓着もないだけの人だったのか。見方が甘かったな。(弥)