倶樂部余話【六十二】試験に絶対出ない常識問題(紳士服編)(一九九四年六月七日)


Q1:上着の打ち合わせ、シングルよりもダブルの方が格上である?

Q2:トラウザーズ(スラックス)の裾は、折り返しを付けるダブル仕上げの方が格上である?

Q3:トラウザーズは、ツータックよりもノータックの方が正統である?

A…答えはすべて×です。

 

このように間違った常識のひとつが「肩幅が広いほど動きやすい」です。試しに、右腕で電車の吊り革を持つ動作をしてみます。肩幅が合っている上着を着ている場合には、ちゃんと右腕だけが上がって、右前裾がやや持ち上がり、首の後ろから左半分はほとんど変化しないはずです。ところが肩の大きすぎる上着でやると、腕だけで動いてくれず、服全体が持ち上がり、衿は逃げ、左半身までつられて動いてしまいます。正姿勢でいても衿が首から逃げて浮くような極端な上着ならば、上着全体が身体から抜けて、左側にズレていってしまいます。

つまり、動きやすいかどうかは、肩幅だけではなくて、肩の作りと袖の付け方にあります。上着を試着したら、前ボタンを留め、片腕ずつグルリと一回りさせてみて、服全体が動いていないかをチェックして下さい。そこで販売員が何と言うかで、店のレベルもチエックできるはずですから…