【倶樂部余話】 No.293  奈津井さんのスーツ (2013.03.22)


 汚職で捕まった代議士の様に見えてはいけないのが、ネクタイなしでスーツを着る、というスタイル。本当は相当に難度の高い着こなしなのですが、震災以降の半強制的なクールビズの流れにあっては避けて通ることはできません。そこで某地方銀行勤務の奈津井さん(仮名・35才)に、どんなスーツなら作ってみたい?とヒアリングすることにしました。
 「上下揃いで着ることもあれば上だけや下だけのバラでも着たい。タイは付けない時の方が多いですが、でも締めることもあります。下の方が早く傷むので、のちのち上だけでも使えるデザインで。肩パットはなくていいです。邪道でしょうが、半袖のシャツでもいいように腕がベト付かないサラッとした袖裏地に。着丈短め衿幅細めですけど、行き過ぎないで程良く…、銀行員なので。」
 「生地はですね、色が黒か紺で、無地っぽいけど無地じゃない。光沢のあるのはノーです。通気性は最重要ですが、でも透けちゃダメ。シワにならないポリ混で、それでいてふんわり柔らかいいい生地ってあるんでしょうか。予算は六万五千円で上げてもらいたいんですが…。」
 はい、承知しました。すべてお望みをかなえましょう、とまず見本を一着作ってみました。で、せっかくここまで考えたのだから、この「奈津井さんのスーツ」、他の方にも薦めることにします。三種の生地に絞って十着限りで用意しました。ぜひ見に来て下さい。(弥)

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