【倶樂部余話】 No.267 三年振りのアイルランド (2011.2.21)


 三年振りにアイルランドへ行くんです、と話すと、皆さんから一様に「財政破綻で大変なんでしょ」との心配をいただきました。問題が顕在化した直後なので、私もそんな思いを持って飛びました。
 陽気なアイリッシュもさすがに少しは落ち込むのかな、との予想は見事ハズレ。「先祖たちが英国から長年にわたり受けてきた圧政や貧しさを思えば、これくらい大したことないさ。ケルティック・タイガーとまで称されたあの好景気だってそもそも政策主導で、あれ自体は正しい選択だったし、まあそれなりにいい思いもしたよ。消費税や水道代はこないだいきなり上がったし、公務員は減給、年金も減額になったけど、仕方ないね、また我慢の暮らしさ。でもユーロから仲間外れにされたらそれこそ大変だから。ただ、バブルを思いっ切り享受してきた若年層は、急速な冷え込みに対処のすべがなく、戸惑っている感じだね。」
 逆に日本をよく知るあるアイリッシュからはこう励まされました。「仕事はどう、と聞くと日本人は誰もが『悪いよ、良くないね』と答える。日本人の謙虚さというか、みんな一緒に、という性格の現れなんだけど、あれは良くない。たとえ虚勢でも『他は悪いかもしれないがウチはいいよ』と言おうよ。じゃないと中国にすぐ取って代わられちゃうよ。」
 さて、今回の主たる用件は、今後も現レベルのアランセーターの扱いが続けられるか、という大きな交渉だったのですが、直談判の末、何とか供給を受けられる目処が立ち、一安心です。他にもダブリンで新旧十社ほどの買い付けを滞りなく済ませ、早朝に帰国。羽田発着欧州便は実に便利でした。 (弥)