倶樂部余話【一七五】講演の顛末(二〇〇三年七月一日)


講演(アランセーターの話)を頼まれたのは初めてで、しかも二日で二会場連続。かなりの準備とそれなりのリハーサルをし、同じ内容で臨んだが、結果は天と地ほどに明暗が分かれた。

初日は、都内某大学の三、四年生約百人が対象。興味のある者だけが聴講する公開講座の類いかと思っていたら、何と年間の正規授業のひとつだという。週替わりで服飾業界の講師を迎え、出席取りを兼ねた簡単なレポートを提出させ担当教官が単位を与えるらしい。人気授業だというが、そうだろう、だって学生にとってこんな楽勝科目はないはず。 講演直前にそれを聞かされて、なんだか悪い予感がしたが、もう後の祭り。案の定、静寂の中、淡々と90分は進み、互いに(ミスキャストじゃない?)と感じながらも、自己嫌悪に陥った私だった。

翌日は、アイルランド愛好者たちの小さな集い。それも少額だが有料だ。熱心にメモを取る老夫婦などもいらして、話は予定を一時間も超過するほどヒートアップ。ほぼ満足のいく出来だった。

やはり、自分は百貨店向きでなくぞっこん専門店タイプの人間なんだな、と今更ながら実感した次第。ともかくも大変いい経験だったことは間違いない。