【倶樂部余話】 No.258  はじめの一歩 (2010.5.24)


 当店、いろんなものを誂え(あつらえ=オーダー)で扱っていますが、例えば、セーターやジーンズ、ベルトなどは、既製品の中から気に入ったものを探し当てられれば、必ずしもオーダーじゃなくても、というアイテム群でしょう。しかし、シャツと靴、このふたつは、自信を持って言えます、オーダーの方がいいです。既製品をあちこち回って探し歩くよりも、最初から作っちゃった方がラクだし、しかも楽しいものですよ、と。
 シャツと靴にはいくつかの共通点があります。まずサイズの個人差がものすごい。シャツは首と腕と肩と胸と胴、靴だと長さと幅と高さ、これが皆さんバラバラで、しかもどちらも肌への密着度がスーツやパンツよりも高いので、ぴったり目とかゆったり目の個人の好みも随分とまちまちなのです。どんなに優れたモノもサイズが合わなきゃ意味がない、というのはすべてのものに言えることなのですが、特にシャツと靴についてはその要素が大きいものなのです。また、傷んだらリペアできる、とか、分不相応に高価すぎるものを持つとかえって使わなくなって結局宝の持ち腐れになってしまう、などということも共通点に挙げられます。さらに、凝ったオーダーをしたければ徹底的に凝れるけれど普通のシンプルなものならばほとんど店に丸投げ・お任せでいける、という関与度の振れ幅の大きさも共通してます。そして、何よりも、他のアイテムよりもリピーター比率がずば抜けて高い、というのが、シャツと靴の特徴でして、これこそ一度作った人がオーダーの優位性を実感してくれている、という確かな証拠でしょう。
 しかし、そうは言っても、オーダーは「はじめの一歩」のハードルがどうしても高いもの。ないものを買うのですし、何からどう進めたらいいのかも不安でしょう。既製品のように「思わず衝動買いしちゃって…」などと自分に言い訳もしにくいですし、ちょっと知的な創造行為を楽しもう、という気持ちになってもらわないと、面倒くさいよ、の一言でオシマイになってしまいます。
  だから店は考えるのです、どうやって「はじめの一歩」のハードルを低くするか、を。そして今月に企画したふたつの連続イベントが、初めての方にとってその絶好の機会となって欲しい、と、お勧めする次第なのです。(弥)