【倶樂部余話】 No.311 フィナンシャル・ストライプ (2014.8.28)


 作ってしまいました「フィナンシャル・ストライプ」のスーツ生地です。
 「ロンドンの金融街シティを闊歩するビジネスマンたち。彼らがこぞって小脇に抱えているサーモンピンクの新聞、それがフィナンシャル・タイムズ(FT)である。中には、あたかもFTとコーディネートをするかのごとく、サーモンピンクを差し色にしたストライプのスーツを着ている者までいるという。そんなスーツの柄を人はいつしかフィナンシャル・ストライプと呼ぶようになった」
 面白い話なのでずっと気になっていたのですが、誰から聞いたのかも思い出せず、調べてみてもこれという確証がありません。もしかしたら、ロンドンの地下鉄の入り口には傘巻き屋がいるらしい、というのと同じ類の都市伝説なのかもしれません。
 英国人は意外に紺のスーツを着ません。ましてやシティの人々ですからまずベースは黒に近いチャコールグレーでしょう。そこにサーモンピンクのストライプ。これを数多くの英国生地の見本帳から探してみましたが、あるのは紺地にパープル系ピンクの差し色ばかりなのです。
 あり物で見つからないなら、作るしかない。こんな無理を聞いてくれるのは葛利毛織だけで、早速四月に一宮へ駆け込みました。スーパー120のふわりとした霜降りチャコールにFTを再現したサーモンピンク、葛利ならではのスローなションヘル織機によるビンテージな味わい。理想的なフィナンシャル・ストライプが織り上がり、いよいよ販売開始となります。(弥)

※Financial Times は、英国ではファイナンシャル・タイムズと発音しますが、日本では、同紙と提携している日本経済新聞をはじめとして、もっぱらフィナンシャル・タイムズと呼ばれているのが常ですので、ここでは日本の慣例に倣いました。

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