倶樂部余話【406】100周年でのアランセーターは。(2022年8月1日)


アランセーターで検索をかけると、当店の「アランセーターとは」というページがかなり上位に表示されることが多いはずです。特になんの対策も施していないのにこの結果は、私の書いていることが信頼されていることの何よりの評価なのだと大変嬉しく感じます。当店のHPの中でも飛び抜けてアクセス数の多いこのページをこのたび大幅に書き換えました。すでに気づかれた方も多いと思います。

 どう書き換えたのか、ということを少しお話しします。今までは、アラン諸島の住人によって編まれたアランセーターを頂点に置いて、よりホンモノに近いものは何か、という尺度から、アランセーターを分類していました。しかし、もう本物偽物議論をしている時代は終わりました。どこで誰が編もうと、それがハンドであろうがマシンであろうが、それはすべてアランセーターです。本物も偽物もありません。世界中にありとあらゆるアランセーターが存在するのです。母や妻が編んでくれたたった一枚のアランセーターはたとえどんなに拙い技術のものであっても宝物の一枚ですし、アイルランド旅行で土産に買ったアジア製の安価なマシンニットもその旅人にとっては思い出の一枚です。つまりそれぞれのアランセーターにそれぞれの意義や価値があるのです。

 多様性と一言で言ってしまえばそれまでですが、私の考えがここに至るには遠因と近因があります。遠因は気仙沼ニッティングです。発足前夜のキーパーソンである糸井重里氏や三國万里子氏のアラン諸島訪問については私もとっておきの資料や情報の提供に惜しまず協力したこともあり、かなり早い段階から注視していましたが、この気仙沼ニッティングには気付かされることがとても多かったです。本物とか偽物とか言ってること自体がナンセンスだと思い知りました。
近因、それはこの5月に訪れたゴルウェイウールGalwayWoolです。アイルランド原種の羊から採集した貴重なウールを使ってアランセーターを編む、という新しい発想が実現間近になって、従来とは全く異なる付加価値を持ったアランセーターが初めて世の中に出るのですから、それにふさわしいポジションを与えてあげたかったのです。

 ということで、今年からの当店のアランセーターはとても多彩な顔ぶれです。ついでなので簡単に並べてみましょう。
☆ゴルウェイ・ベイ・プロダクツ…アラン諸島で編まれたアランセーター。2001年で販売終了。
☆クレオ…凝り凝り柄入りのハンドニット。2022年より販売再開。今後も少しずつ販売予定。
☆ゴルウェイ・ウール…貴重なアイルランド原種の羊毛でハンドニット。2022年より販売開始。
☆オモーリャ…優れた編み手によるクラシックなハンドニット。2022年で販売終了予定。
☆アランレジェンド…当店オリジナルのアイルランドのハンドニット。
☆ディスイズアセーター…山形・米富線維による技術の限りを尽くしたマシンニットアランを斡旋。

 奇しくも野澤屋100周年ジャック50周年の今年2022年に、このようなアランセーターの集大成が実現するとは、喜びに耐えません。ここにいたるまでには実に多くの人が関わっています。感謝します。(弥)