倶樂部余話【一五三】ドレスシャツのついての一考察(二〇〇一年一〇月五日)


ネクタイなしのスーツ姿と言うと、どうしても汚職で逮捕された代議士を思い浮かべてしまいます。(自殺防止のため、タイとベルトを没収されるらしい。)イタリア人はそう見られないための免罪符を考えつきました。タイなしで衿元が目立つのを逆手に取り、そこにもうひとつのボタンを付けてしまったのです。Due Buttoni(二つの釦)と呼ばれています。

これと良く似た現象が実は約百八十年前に起きています。ポロ競技の際、シャツの衿元が動くのを邪魔に感じたアメリカ人、ヘンリー・ブルックスが考案した、ボタンダウンシャツ(ポロカラー)です。

二つの共通点は、本来不必要な箇所に釦を付けるということで、シャツの着こなしの幅を大きく広げたということです。 この余計な釦がマヌケになりそうな衿元を救っています。「タイが嫌で外してるわけじゃない、意識してタイを付けてないのです。」という主張が生まれます。

ただ、ボタンダウンが今では完全にカジュアル化したのに対し、Dueの場合、まだカジュアルというよりもドレスダウンと言った方がふさわしく、ヨレヨレクタクタのシャツではサマになりません。ドレスシャツとしての上質さが必要です。

そこで、上質なシャツを見分ける一つのコツを伝授しましょう。背中を見て下さい。スプリットヨークといってヨークの真ん中に縦の縫い目のあるシャツ、こう縫ってあるシャツは間違いなくいいシャツです。但し、こうなっていないものでもいいシャツはあります。逆は真ではないのでご注意を。

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