倶樂部余話【332】ネタにもならないガンの話(2016年6月1日)


 両親もそのまた両親もみんなガンでしたので、私にもいつかは必ずその時がやってくる、そう思っていました。しかしそれは意外なほどあっけなくやってきてあっさりとなくなりました。見逃されそうなほどの小さな異変が胃カメラで見つかったのが三月のこと、そして内視鏡で2㎝ほどの悪者を取り除いて釈放。その間わずか三ヵ月。術後三日間絶食した以外はほぼ日常通りの生活で、もし日本中のガン患者何万人を順に並べたとしてきっと私はブービー賞が取れるかもしれません。こんな簡単にガン経験者のレッテルを貼ってもらってはガンと懸命に闘っている人たちに申し訳ないという思いです。痛がりで怖がりの私ですので、多分いつもよりもビクビクした顔つきになっていたことでしょうが、面持ほどのことはなかったのでした。

 と同時に、知りたがりで教えたがりの私としては、ちょっとだけ「ちぇ残念」と感じていることもあります。不遜とのそしりを受けることを恐れず言うならば、ですね、「これじゃ、闘病記も書けないし、余話のネタにもならないじゃないか」ということ。家族からはバカヤローと怒られそうですが。

 たくさんの方からお見舞いの言葉を掛けていただきました。おかげで大事に至らずにすみました。私は幸せ者です。ありがとうございました。(弥)