倶樂部余話【344】応援したくなる値上げとは(2017年6月1日)


日本から外国にハガキを出すと世界中どこへでも60円(船便)です(航空便は70円)。また香港から日本へは航空便一通約53円です。ところが日本国内はこの6月から一枚52円から62円に上がります。海外と国内の料金が逆転しました。なにしろデフレで喘いでいるこのご時世に19%も値上げとはふざけた話です。近頃のハガキ通信の大半は法人需要なはずですから、値上げしなくてもあの特殊な糊で三重にも四重にも貼り合わせた、DMや請求書などの「脱法」ハガキを規制すれば事足りると私は思うのですが、そこは野放しにしたまま、しかも年賀状だけは据置など不可解な例外を設け、旅先からの思い出の絵ハガキなど個人のささやかな楽しみからも搾取するなど、もう弱い者いじめの狙い撃ちです。

悔しいかな、それでも抵抗できないのはこれが独占事業ゆえですが、この郵政事業の規制に長年果敢に挑み続け、世界でも類を見ない宅急便のシステムを創造してきたのがヤマト運輸です。今回そのヤマト運輸も10月から値上げをします。増えすぎた荷物に対処しきれないことが理由ですし、値上げするにあたりプレス発表や広告などで最大限に利用者への配慮をしていることが素人にもよく分かりますから、こちらについては怒りの声はなく、逆に、日本郵便にもアマゾンにも負けるんじゃないぞ、頑張れヤマト、の応援の世論が醸されています。値上げさえ応援したくなる会社なんてそうそうありません。すごいことです。(それに引きかえ、ヤマトの値上げに乗じて、うちも一緒に上げちゃおう、と追随する他の宅配便業者の情けないことと言ったらありません)

と、ここまで書いたところで困った知らせが入りました。主力のスーツ工場から「工賃を7月から値上げしたい」との要請です。21年間も据え置きだったのである程度やむを得ないだろうとは思っていますが、それにしても1万円以上の値上げを余儀なくされることになります。さあ、果たしてこの値上げ、そっぽを向かれるのか、応援してもらえるのか、30年やってきたこの店の真価が問われているような気がして、実は今とってもびくびくしています。(弥)