【倶樂部余話】 No.305 毎度恒例の海外出張報告、飛んでイスタンブール (2014.02.22)


 いつも行く一月のダブリンというのは、寒い日ほどいい天気で、むしろ雨の日の方が暖かい、というのが常なのですが、今年は晴れてて暖かい、という珍しい数日間でした。嵐や雪など、荒れた天候だった今冬の欧州にしては幸運でした。
 年に一度、一月の四日間だけ、ダブリンの大きな展示会場には、芸術的なクラフトやハイレベルなファッションから始まって、それこそまったく陳腐な土産物グッズに至るまで、アイルランド内外の数百社が一同に集まります。目の回るようなモノの洪水ですが、こちらも毎年のように二十回以上も通っていますから、だいたいの顔ぶれは分かっていて、首尾良く三日間で十五社ほどと打ち合わせを済ませました。陶器、ケープ、スカーフ、ツイード、コート、など多岐に渡りますが、今回の大きな収穫は、セーターの充実です。看板商品のアランセーターはもちろん、シェットランドのトラッド物、ドネガル毛糸を使ったデザイン物やカシミアやメリノ、ラムの無地物の久々の復活、と、男女とも、今度の冬はセーターの品揃えの幅がグンと拡げられるはずです。
 今回初めて乗ったのがトルコ航空。出張を決めたのが遅くてここしか空いてなかったのですが、ダブリン往復がたったの二万円(燃料サーチャージが約6万円別途加算されます)というのには驚きました。狭い機内の通路でいきなり数人がお祈りを始めたのにはさすがに面食らいましたが、機内食も良くて充分に快適でした。帰路は乗り継ぎ時間が長かったので、イスタンブールの夜の中心街を三時間だけ「世界ふれあい街歩き」をして楽しみました。東欧と地中海と中央アジアと中東が混沌としたとても魅力的な街だということは短い時間でも充分に感じ取れ、今回は東京には負けたけど、いつかこの街でオリンピック、というのはとても楽しくなりそうと思います。
 今年は、昨年の様に雪で機内に閉じこめられることもなく、また、財布を落とすこともなく、無事に旅を終えることができました。(弥)

【倶樂部余話】 No.304 新しいお客様を増やそう (2014.01.16)


 新年を迎え、今年の店のテーマに掲げたのが「新しいお客様を増やそう」です。これには二種類あって、初めての方はもちろんですが、履歴があるのに縁遠くなってしまった方の復帰も含んでいます。
 当店は固定客比率のとても高い店だろうと思います。そして固定客はその年月が長くなればなるほど購買額は徐々に減ってくるのが普通です。そんな店がわざわざ取り立ててこんなテーマを打ち出せば、従来の顧客の方々には「この店は我々を見放すのか」と怒られそうですが、いや、そうじゃないんです。逆なんです。
 固定客に頼りすぎて、顧客にしがみついて、新陳代謝を忘れたために消えていった店を、私はいくつも知っています。そうならないために、今の顧客が将来もずっと楽しくご来店いただける店であり続けるためには、常に新しいお客様を増やしていかなければなりません。そしてその最も有効な方法は、顧客から新しい方を紹介していただくことです。
 だからといって、紹介料を出すとか、割引するとかオマケを付ける、などという手段は取りません。それは必ず人間関係を悪くします。友人との自然な会話のなかで「洋服、キミどこでどうしてんの?」「シャツとか靴とか作ってみたくない?」と話題に出していただければありがたいです。(セヴィルロウが新しい客を増やしたい、って言ってたよな)と心の片隅に覚えていて欲しいのです。その小さな積み重ねが大切なんです。
 今年もどうぞご贔屓に。よろしくお願いいたします。(弥)