倶樂部余話【八十七】秋の最初に買う服(一九九六年九月一五日)


 

ある期間が首都圏200家族を対象にした調査によると、一家族(2.8)が保有する衣服(肌着を除く)の平均保有枚数は337枚。うち過去一年間に着用したものは59%。残りは「着るつもりでいて結局一度も着なかった」非着用品(24%)と「着るつもりはなく保管している」退蔵品(17%)なのだそうです。

皆さんの実感と比べていかがでしょう。300枚と言っても、単純に一人あたりで120枚、春夏と秋冬で60枚ずつだから、そう驚くこともない数字に思えます。

気になるのは、一度も袖を通してもらえなかった、かわいそうな服たちがその4割をも占めるという事実。礼服や晴れ着、思い出の服、などはともかくとしても、当店の服はなるべくこの4割には入って欲しくないな、と思います。特に我々の商品には、使ってみて更にその良さを体感する、といった類の品が多く、「こないだ薦められたアレ、思いのほか役に立つね。重宝してるよ」というお声は何よりの励みになります。

不幸にして非着用品に入ってしまった当店の服は、嫁ぎ先でうまくいかない嫁のようで、仲人にも責任があります。できるものなら何とかしたい、私が悩み相談所になりましょう。

高名な女流服飾評論家曰く「秋の初めに最初に買う服、この選択はとても重要でしかも一番わくわくするときです。なぜなら、これから先一年の自分のオシャレが成功するかどうかがその服で決まってしまう場合が多いからです」

秋本番、最初に買う服、もうお決まりですか。