倶樂部余話【八十八】秋のロード(一九九六年一〇月一六日)


昨年同様にこの時期に長期で出店を留守にすることが増え、すでに松江と山口のフェアを終えました。ブルートレインの寝心地にも少し慣れました。

「オーナー店主のくせに、この秋の一番楽しいときに店を空けるとは何たることか!」といったお客様の反発もあるかなぁ、と心配もしましたが、あに図らんや、多くのお客様が、この静岡の小さな店から日本中に様々なジャブを発信し、小さいながらも少しずつ評価をいただいていることを、自分のことのように喜んでくれて、おまけに「あんまり働き過ぎんなよ」と身体まで気遣っていただいて、本当にありがたい限りです。

お客様の都合もあるだろうに「この日はダメよ」という私のスケジュールに合わせて客の来店を制約するなんて、思えばずいぶんわがまま放題な店主で、その甘えに寛容でいていただけるお客様を嬉しくそして大いに誇りに思いたいと、改めて感じております。