倶樂部余話【一〇七】ミレニアム(一九九八年五月四日)


世紀末である。辞書で「世紀末(decadant)」を引くと、退廃的、病的、との意味もあるが、これは一九世紀末に欧州、特にフランスで起きた「世も末だね」といった風潮を表現したもので、今二十世紀末に関しては少しニュアンスが違うようだ。

何しろ半端な世紀末ではない。千年祭(ミレニアム)なのだ。英国はロンドン・グリニッヂ近郊に巨大なミレニアムドームを建設中だし、西暦二千年には欧米の各地で記念イベントの計画がある。(面白いことに、二十一世紀の幕開けとなる二〇〇一年には何のプランもないらしい。) 千年前といえば、我が国では平安の世、源氏物語が出来た頃。史上二回目の千年祭という貴重な瞬間に巡り会えるとは、私たちは運がいい。

「二〇世紀/百の人・こと・発見」といった特集をよく目にするように、とにかく二〇世紀の総決算、いや源氏以来千年の一大総決算という流れが近頃はっきりと見えてきた。時代のキーワードは、リバイバル・懐古・焼き直し・復刻・パクリ・歴史・メモリーなどで、逆に今は、最先端・最新鋭・独創的などが隅に追いやられている。

時代傾向はファッションにも当然強く現れる。私はこの二〇世紀総決算ブームのピークこそが今年の秋冬だと予想している。しからば具体的には、というお話はまた秋口に触れることにしたい。