倶樂部余話【一〇六】北アイルランド(一九九八年四月八日)


プロ野球開幕です。我が横浜ベイスターズも今年こそ三十八年振りの悲願の優勝をと、幸先の良い三連勝のスタートを切りました。

さて、野球もさることながら、目下の関心事は、北アイルランド和平です。アメリカを仲裁役にしての英愛両国による円卓会議の和平合意期限が四月九日と目前に迫っており、この日までに合意案がまとまらないと、一二日のイースター(復活祭)のパレードで暴動が起きる危険も予想されています。自己破滅的に直進するアイルランド、二枚舌的外交術に長けた英国、四千万人のアイルランド系住民(クリントン家も)を抱えるアメリカ、この三者のせめぎ合いが連日続いています。長年の紛争に平和的解決の糸口が見いだせるよう、祈るばかりです。

そんな思いの中、映画「タイタニック」を観ました。単純な展開だけに、特撮モノとみるか恋愛モノとみるか、いろんな見方があると思います。私としては、一九一二年当時を忠実に考証した英国の紳士淑女の衣装は大変興味深いものでしたし、ケルトの調べやアイリッシュパブミュージックを効果的に使った音楽にも心震えました。支配するイングランドと支配される側のアイルランドという視点からも充分楽しめました。そう、この悲劇の豪華客船が造られた場所こそが、北アイルランド・ベルファストでありました。