倶樂部余話【一八二】海外出張報告(二〇〇四年二月五日)


恒例の海外出張報告です。今回は、ダブリンとロンドン(&グローヴァオールの工場見学)というシンプルな旅でした。

私たちは見知らぬ土地へ行くと、ついその土地らしさを観察したがり、その発見に感動したりするものですが、今回は何度も訪れた二都市だからでしょうか、逆にその「らしさ」が消えて行くような印象を抱いて帰りました。

ダブリンは、いよいよ先進国の仲間入りを果たしたアイルランドの自信に満ちた勢いで溢れています。この十年で三倍に急増した観光客は、従来から皆が抱いている古いアイルランドを求めて訪れているのに、 ダブリン自身はそのイメージを打ち消したがっている、というのはやや皮肉めいています。若者がギネスを飲まなくなった、という話も聞きました。でも、きっとあと何年後かには、 ヨーロッパのどこにもない新旧の魅力に溢れた街になるんじゃないかな、という期待も大です。

 ロンドンは、随分東京みたいになったな、という印象でした。昨年はミラノでの英国趣味の強さを感じましたが、どうやら逆にロンドンは今イタリア趣味を甘受しているようです。二百年も続いていた老舗の店が目抜き通りから消え、その跡に巨大メゾンブランドがやたら明るく無機質な店を構えています。 かつては薄暗かったセヴィルロウも今はきれいな店がずらりと並びました。良くなったことといえば食事。コンラン系のレストランばかりハシゴしましたが、どこも美味でした。ある意味これも東京っぽいとは言えますけどね。