第一回「カクテル・パーティ」~冬のジン~


第一回「カクテル・パーティ」~冬のジン~

 

一九八九年十二月三日(日)午後七時より九時

於「セヴィルロウ倶樂部」 会費…三千五百円(税込)

 

 第一回目ですので、こんなパーティをやりたいのだ、ということをお伝えいたします。

どんなパーティなのか?

 ただ集まって騒ぐだけのパーティならばどこにでもあります。あえて当店でやるからには、「セヴィルロウ倶樂部」らしいものにしたいと思い、行き着いたのがこの「カクテル・パーティ」です。カクテルの種類はスタンダードなものだけでも二百種とも三百種とも言われ、そのそれぞれに名前の由来や逸話が二つや三つは語られてます。当店では、毎回その中から三種類を体系的に選んで、ひとつずつを極めてみようと思います。

従って、一般のパーティのような女性の接待や唄、ダンス、ゲームのようなアトラクションは一切ありません。かなり「勉強会」的な要素を含んだパーティで、ちょうど女性たちがワインの試飲会をやるのにも似ているかと思います。

ゆくゆくは、年に四回、四季折々のカクテルを取り上げたパーティを恒例化したいと考えています。まずは、第一回目、「冬のジン」の特集です。

当分は男性オンリーです。

 女性の方には大変申し訳ないのですが、当分の間は男性のみの参加に限らせていただきます。ご出席の方にはバーでの会話のネタをご披露しますので、実際の酒場で個人的にご伝授下さい。

服装はどうしたらいい?

 一番多い質問なのですが、まず最初に一言。このパーティのために当店で一式買い揃えるなどということはしないでいただきたいのです。

 服装については、貴方自身に最も相応しいドレスアップをしてお越し下さい。日曜の夜を選んだのは、貴方にわざわざ着替えて来ていただきたいからなのです。

 もちろんタキシードをお持ちの方は、ぜひタキシードをお召し下さい。ちなみに今回は、当店の社長(=父)はタキシード姿ですが、私は着用しませんので、タキシードをお持ちでない方も、どうぞ安心してご出席下さい。ドレスアップは誰のためでもなく、貴方自身の気分の昂揚のためなのですから。

 コーディネートのご相談については、出来る限りのアドバイスをいたしますので、どうぞ遠慮なくお問い合わせ下さい。

ホテルのバーが協力です。

 この企画は、静岡ステーションホテルさんの協力がなければ実現しませんでした。バーではこの度の私たちのパーティのために、わざわざ新たに九十個ものカクテルグラスを購入しました。また、継続するという前提で、費用も特別に押さえていただきました。当日は、派遣される二名のバーテンダーが、皆様に一流のカクテルをサービスしてくれるものと確信しています。

メモリアルグッズを検討中です。

 パーティの記念になるようなメモリアルグッズを差し上げたいと考えています。できれば、何回か参加すると一揃いになるようなものを、と現在検討中です。

成功するかどうかは貴方の参加次第です。

 パーティをやるからには、楽しく二時間を過ごしたいものです。そのためには、ぜひ貴方に参加していただきたいのです。ぜひご出席の意思をお知らせ下さい。

 

※(補足)バブル末期に咲いたあだ花?、カクテルパーティのご案内文です。当時は店内の在庫も少なく、今では信じられないぐらいすっきりとしていたので、商品をササッとフィッティングルームに押し込んでしまえば、パーティ会場に早変わりできたんです。

 

 手元に残っている参加者名簿を見てみると、二十五名の顧客が参加していますが、二十五才から六十三才まで、実に幅広いですね。開店当初は顧客に父の知己が多かったことから、父の知り合いのお客様と開店以降ご贔屓いただいた若い顧客層がちょうど半々というような構成になっています。この二十五名のうち、十六年後の現在、物故者が二名、今でもメンバーズの方が七名おいでです。

 

 当日の写真も残っていて、男ばかり約三十人、片手にカクテルグラス、片手にテキストを持ち、赤い顔をして、真剣にバーテンダーの話に耳を傾けている、というおかしな光景になっています。