倶樂部余話【九十一】セールをするのは店の都合(一九九六年一二月二五日)


「セール」と聞くと色めき出す人もいれば、「セールならば行きたくない」という人も意外に多い。

確かにモノが安く買えることは魅力だ。しかしそれがためにかえって不愉快な思いもする。混雑する売場、山積みの安売り用追加商品、買わなきゃ罪悪とばかりに迫るぞんざいな店員の態度…。つまりサービスが低下して、楽しい買い物ができないなら行きたくない、ということなのだろう。

いまだに売る側の多くは「セールなのだからサービスが悪くなるのは当たり前だ。その分値段を下げれば客は喜んで買うさ」と思い込んでいるようだ。しかしはっきり言いたい。セールをするのはあくまでも売る側の都合なのである。なのにその都合を客に押し付けてはいないだろうか。考えてもみよ、安売り航空券で乗ると機内サービスが悪くなる航空会社など、私は聞いたことがない。

私たちはこう考えます。セールは新しいファン客を増やす絶好のチャンス。自店の魅力をもっともっと知っていただける最良の契機なのです。だから、いつも通りの接客、そのままの商品(セール専用の安売り品を追加しないのが原則)、変わっていいのは値段だけです。

あなたのご来店を心よりお待ちしています。

 

※この一文は初めて出した新聞広告の一部として公開掲載した。変わったセール広告を見た、といって来店された新規客も何人かいました。