倶樂部余話【一七九】サイズの話(二〇〇三年一一月七日)


私たちはどうしても知りたいことなのに、お客様はあまり積極的には教えようとしてくれないこと、それがご自身のサイズです。

もっとも、わざわざお聞きしなくても、一度お目にかかれば、すぐにその方のサイズは大体分かります。私たちは店内の商品をほとんど自分たちで試着した上でその大きさを把握していますから、目の前の方に一番ふさわしいサイズのものをプロの目で選び、お薦めすれば良いのですから。

そのようにいかないのが、電話やメールでのお問い合わせの場合です。あたかもその人が眼前にいるが如くに、その方の体格を頭に思い描かなければなりません。ですから、失礼とは思いながらも、その方のサイズをしつこいぐらいにお伺いすることになります。

ところが、お客様からの返事は極めて曖昧で、Mです、とか、9号です、とか、また、性別すら不明というメールがあったり、さらに、ご自分の体型も伝えないでおいて「大きなサイズはありますか」といった、答えに窮する質問もあります。

はたまた、英国のAブランドは38で伊のBなら46を着てます、と、持ち物自慢をしてるの?という返事もありますが、これは鮨屋でアガリとかムラサキとか言って通ぶっている無粋な客と同じじゃないでしょうか。

こちらはビジネスとして聞いてるんだから、どうして、みんな、一番分かりやすい万国共通のセンチcmで教えてくれないのかなぁ、と思ってしまうのです。

そういえば、昔に読んだホイチョイの恋愛指南書に「靴のサイズを聞いて、cmでなく36とかの欧州サイズで答える女には要注意。見栄っ張りで、高くつく恐れ大」ってあったよな。