倶樂部余話【六十四】夏だけど冬のこと(一九九四年八月一日)


苦労話を売り物にするのは好きではないのですが、正直、このカシミアの企画は骨折りでした。何しろ「カシミアコートを十万円で売りたい。しかも品質は落とさず、なおかつオーダーメイドで。」という難題です。着想から約半年、数々の交渉を重ね、その間に不景気と円高も味方してくれて、ようやく実現に至った夢の企画です。

生地問屋と縫製工場には、閑散期ならば、という条件で無理を聞いてもらいましたので、八月だけの限定受注となります。受注生産のみで、店頭販売の予定はありません。仕上がりは十月末、お支払いもその後です。ジャケットもできますし、レディス仕様も可能です。

暑い盛りに冬の話で、決断しにくいでしょうが、後々喜んでいただけるものと確信し、今回は普段より強めの売り込みをさせていただいております。冬の葬儀の必需品でもあります。是非この機会にご注文をお願いいたします。