倶樂部余話【一六〇】大直し(二〇〇二年五月一日)


いわゆる「お直し」にも二通りあって、ひとつは、販売時に、お客様の寸法に合わせるための補正で、これに関しては、当店で無料で承っています。着る人にちゃんと合った服を提供するのが私どもの義務だと考えるからです。(詳細は余話【131】を参照下さい)

もうひとつは、お客様の都合で、有料で受けるものです。太った、痩せた、傷めた、といった理由がほとんどですが、近ごろ増えてきたのが、シルエットごと直してくれ、という大補正です。

特に、メンズのスーツは、より体にフィットした着方に急速に変化しているので、一昔前のスーツを着ていると、素人目にもすぐにバれてしまいます。さりとて、スーツをすべて新調し直す、という訳にもいかず、手持ち在庫を少しでも今風に直せたら、という切なる願望が発生することになります。

具体的には、上着の胴廻り詰め、パンツは2タックを1タックにして裾幅と丈詰め、という作業で、費用は一万円ほど。もちろん新品同様とまではいきませんが、気恥ずかしさは随分と解消できるはずで、実は、私もかなりのものをこうして直して着ています。

モノを売るだけでなく、売ったモノは長持ちさせてあげたい、と考える当店、これも英国気質でしょうか。