倶樂部余話【163】夏のお楽しみ企画(2002年7月19日)


蝉の声が聞こえてくると、当店はそろそろ暇な時期になります。でも、お客様の足は遠のいて欲しくない、ということで、毎年この時期は売るためではないイベントを考えます。 萬年筆やカフス・タイピンを集めたりレース陶器人形を紹介したりと、売場スペースに余裕のあるこの時期にしかお見せできないモノを特集してきました。普段と違うモノをやると、お客様も普段と違う一面を見せてくれて、意外な方が意外なご趣味をお持ちのことを、思わず発見できたりします。

今年は二本立ての企画です。ひとつは、英国酒場さながらのテーブルゲームやトランプを数々ご紹介。浅草で老舗の輸入玩具問屋さんに全面協力していただきました。「大人のたしなみ」を一緒に遊びながら覚えて下さい。

もうひとつは、昨年「自由研究」で思いかけず好評でした、あなたの~を教えて下さい、の聞き取り調査企画です。今年のお題は「臨終の間際に食べたいものは何ですか?」 集まったお話は、順次ホームページに載せますので、奮ってご参加を。

店内は、恥ずかしながら、売れ残りの品評会の様相で、かなり弱気価格ですが、どれも腐心して仕入れた大事な子供達ですので、いい家人に嫁がせたいものです。 是非もらってやって下さい、皆いい子ばかりですから。  

 

倶樂部余話【162】W杯/勝った国だけ・日替まつり、その後(2002年6月27日)


これもO型の性格でしょうか、自分のできることは人も同じようにできる、と考えている節があり、だから、新しいアイデアが浮かんでも、こんなことぐらいは他の誰もがきっと思いつくはずだ、と思ってしまいます。

ところが、今回の「W杯・日替まつり」は、そうでもなかった様で、こちらはほんのシャレのつもりでしたが、業界紙(繊研新聞)に記事で取り上げられたり、お客様から「これゃ面白いね」と賞賛されたり、どうも極めてユニークな企画だったらしいのです。

おかげで、かえって普段の六月よりもご来店の方が増えたほどで、「このせいで、アイルランドを真剣に応援しちゃいましたよ」とか「特に買うつもりのモノもなかったのに、何だか嬉しくて来ちゃいました」など、ありがたいお声を数々と頂戴しました。

「近頃の客は、『あっちの店は努力してないから買ってあげないけど、あんたの店は頑張ってるから買ってあげる』という気分で、店を選別することが増えている」とはある大手専門店の大物経営者の弁ですが、何だか、皆さんからそう言われている様な気がして、少し自惚れています。

自国で開催されたW杯は、私にもいい思い出を残してくれました。 



倶樂部裏話 [4]アニバーサリーリダクション(2002.5.16.)


当倶樂部メンバーズの特典のひとつとして、お誕生日とご結婚記念日の「アニバーサリー・リダクション」があります。
この制度の発端は実に古くて、「お客様の大切な記念日には、何かをして差し上げたい。」という思いは、約16年前、この店を創るのを計画していた段階からありました。
創業当時は、まだバブル華やかなりし時代で、お客様の年齢層は比較的高く、また顧客数も少なく客単価はかなり高く設定してましたので、ご結婚記念日には、花屋さんにお願いして小さな花束をお贈りしてました。もちろん、お客様には喜んでいただいてましたが、そのうち、こんな声が聞こえるようになってきました。「大して買い物もしてないのに、なんだか悪いね。」「頂戴した日に、お礼の電話をする、女房が、ちょっと煩わしいわね、って言っててね。」つまり、インパクトが強すぎたのです。金額的には決して大きなプレゼントではなかったはずですが、花束を贈り物で届けていただく、ということを、お客様は負担に感じられたようでした。
そこで、花束をお贈りするのは、5周年(木婚式)、10周年(錫婚式)など、5年ごとの区切りのときだけにして、ほかは、オリジナルのグリーティングカードをお贈りする、ということに改めました。また、このときに、ご結婚記念日だけでなく、お誕生日にも同様にカードをお贈りすることにしたのです。
その間、花束に代わる気の利いたプレゼントはないだろうか、と思い巡らせていました。しかしながら、もらって負担に感じられるモノではいけないし、かといってチャチなモノでも店の感覚を疑われます。ご夫婦の場合、年三回あるわけですし、同じモノでもいけない、また、毎年変えていかなければなりません。それを準備して管理することは大変ですし、記念日当日に合わせたタイミングでお届けすることも難しいことです。さりとて、店でお渡しする、というのも、なんだか「プレゼント欲しかったら、店まで来て。」と言っているみたいでおこがましいし……。
そもそも、多様な趣味嗜好をお持ちの多くのお客様に、数種類の画一的なモノを用意することで対応できるはずもなく、もし最適なモノが見つかったとしても、そういうモノは、きっと、差し上げるのではなくて、「売りたい」と感じてしまうものです。そう、結局、こんなモノを差し上げたい、と感じられるモノは、私たちが選んだ「売り物」以上にはありえない、ということに気付いたのです。
ならば、私たちが一番自信を持っているモノ、つまり「商品」を手に入れていただくことが、私たちにできるなによりの「祝福」と「感謝」の表現に違いない、と思い、現在の方法に切り替えた、という次第です。
当倶樂部の実施する「アニバーサリー・リダクション」は、このような変遷と試行錯誤の中から生まれたものです。決して、姑息な販促手段として思い付いたわけではなく、私たちの「おめでとう」と「ありがとう」の心からの気持ちなのです。
そのことを、ご理解いただきたくて、この一文をしたためました。 (弥)

倶樂部余話【161】W杯/勝った国だけ・日替まつり(2002年5月23日)


何でも英国では、六月のある日、突然に「病欠」する労働者が大量発生するらしく、困った政府は「仕事中でもテレビ見ていいよ!」との寛大措置を取るよう、各企業に指示を出したそうです。

私も、年初に渡欧した際、「働き蜂の日本人も、この6月だけは、まさか仕事なんかしないんだろ?」と、あちこちで声を掛けられました。

W杯経済効果は何千億円、などと巷では言われ、確かに恩恵に預かるところは多いのでしょうが、逆に、経済減少効果を被るところもあるはずです。当店などは、間違いなく後者に属する方で、今年の六月はかなり悲観的です。

でも、せっかくのお祭り、どうせなら思いっきり楽しみたい。そこで、こんな、やけくそ?企画をたてました。

出場32ヶ国中、当店には9ヶ国の商品があります。その国が勝ったら、次の日一日その国の商品だけはオマケしちゃいましょう!これを決勝戦まで延々1ヶ月間実施。題して「W杯開催記念/勝った国だけ・日替まつり」。

この企画で最も魅力ある国は断然イングランドとアイルランドです。もし、どちらかが優勝したら?はい、もちろん優勝イベント、考えましょう!

これであなたは、日本以外の国も真剣に応援してしまう・・・?

倶樂部余話【160】大直し(2002年5月1日)


いわゆる「お直し」にも二通りあって、ひとつは、販売時に、お客様の寸法に合わせるための補正で、これに関しては、当店で無料で承っています。着る人にちゃんと合った服を提供するのが私どもの義務だと考えるからです。(詳細は余話【131】を参照下さい)

もうひとつは、お客様の都合で、有料で受けるものです。太った、痩せた、傷めた、といった理由がほとんどですが、近ごろ増えてきたのが、シルエットごと直してくれ、という大補正です。

特に、メンズのスーツは、より体にフィットした着方に急速に変化しているので、一昔前のスーツを着ていると、素人目にもすぐにバれてしまいます。さりとて、スーツをすべて新調し直す、という訳にもいかず、手持ち在庫を少しでも今風に直せたら、という切なる願望が発生することになります。

具体的には、上着の胴廻り詰め、パンツは2タックを1タックにして裾幅と丈詰め、という作業で、費用は一万円ほど。もちろん新品同様とまではいきませんが、気恥ずかしさは随分と解消できるはずで、実は、私もかなりのものをこうして直して着ています。

モノを売るだけでなく、売ったモノは長持ちさせてあげたい、と考える当店、これも英国気質でしょうか。

【倶樂部余話【159】提げ札の位置(2002年4月1日)


商品には、いろんなフダがぶら下がってます。総称して、提げ札(下げタグ)といいますが、ここには様々な情報・・・価格、ブランド、サイズ、品質、生産国、取扱いの注意など、商品を選ぶ上で必要な事項が凝縮されていますから、ほとんどのお客様は必ず提げ札を見るわけです。

この札は、誰のためにあるのか。当然お客様のためであり、お客様が最も見やすい位置に付いているべきなのですが、必ずしもメーカー側はそう考えていないようで、単に、倉庫で管理しやすい位置に、最も効率のいい方法で付けているに過ぎません。洋品は衿の後ろ側、ハンガーものは袖口、というのが常です。しかも、百貨店など大手は、自社の値札まで、出荷前にメーカーに付けさせています。 (おまけに、返品自由ですから、戻す時も、当然、付けたままで返します。)

皆さんには、提げ札を見ようとしたら商品まで引っ張ってしまった、という経験はありませんか。それは、提げ札が不自然な位置に付いているからで、それでは陳列も乱れますし、そもそも商品を痛めることにもなりかねません。

お気付きの方は少ないと思いますが、私どもでは、ほとんどの商品の提げ札を、入荷したらすぐに、お客様の見やすい位置に付け替えてから陳列しています。品選びをしていれば、自然と視野に入る場所に付けていますので、気付いてもらえなくても当然なのですが。

手間は掛かりますが、些細なこととして見過ごすわけにはいかない、大切な仕事なのだと考えています。専門店の心意気のひとつとでも言えましょうか。

倶樂部余話【158】春物をどう着るか(2002年3月5日)


六年前にも書いたことですが、新しいメンバーも増えましたので、今一度「春」についての持論をお話しします。

三月四月と、確かに平均気温は上ります。ところが、この「平均」というのがひとつのまやかしなのです。週のうち暖かい日が一日だけある、次の週はそれが二日になる、 その次は週に三日、お彼岸ごろを境に週四日になり、そして徐々に夏に続いていきます。だから、三月初めでも初夏みたいな日もあれば、桜が散っても雪が降るという日もあり、実は平均気温どおりの春の日などというのは滅多にはないのです。

よく男性客が言うことに「いつから春物に着替えたらいいんだろう。待ってるうちに、いつの間にか初夏になっちゃってさ。」との発言。私たちはこういう人たちをまやかしの呪縛から解き放ってあげなければいけません。

具体的にはどうしたら良いのか。まだ寒いうちは、色だけを春の色に変化させる。ネクタイなどは季節先取り感を出すには格好です。そして、暖かい日を狙い、徐々に素材感を変化させます。実際には、明日の服装決めを寒い日用暖かい日用の二通り考えておく、ということも肝心でしょう。 多くの男性はこれを面倒と考えますが、女性の多くは、これが楽しみなのです。



倶樂部余話【157】八度目のアイルランド(2002年2月8日)


アイルランドから無事帰国。馴染みのモノ、新しいモノ、いろいろ発注。

そして、北の外れのツイードの手織り工房を訪ねたり、山間に忽然と建つ小さなニット工場へ行ったり、八度目ならではの辺境の旅も楽しんだ。

西部の田舎町に昨秋開館したカントリーライフ博物館へ寄るのも今回の目的。現存する最古のアランセーターがあるのだ。拝見を熱望していた三年越しの思いがようやくかなった。写真を撮りたいのなら閉館日にどうぞ、と提言してくれた学芸員は館内貸切り状態で私を案内してくれ、さらに非公開の貯庫保管のセーターまで見せてくれた。

当然アラン諸島へも渡る。今回は過去二年とは違う一番大きく賑やかな島の方を九年振りに訪ねたが、今や一大観光地と化していた。 急増する観光客と激減する編み手。この反比例に、アランセーターの将来はかなり悲観的と言わざるを得ない。

日本がバブル崩壊にあえいだこの十年、この国は劇的な経済成長を遂げ、その中では伝統的産業は急速に淘汰されてしまう。永年付き合ってきたストーンサークルの廃業はその典型。この旅はその事後処理のためでもあった。

新通貨ユーロも新鮮だった。ドイツやスペインの人は「違う言葉の国に来て同じお金が使えるとは不思議な感覚だ」と感激していた。

乗継の合間に初めてスウェーデンへも半日だけ寄る。バリアフリーとはこういうことか、と実感。

かくして、レンタカーの積算距離計は千百キロを越えていた。よくもこれだけ走ったものだ。

【倶樂部余話【156】わくわく(2002年1月11日)


謹んで新春のお慶びを申し上げます。

たくさんのお客様から年賀状を戴き、ありがとうございます。その中で、「今年もわくわくさせて下さいね。」という添え書きが妙に多く、私たちに期待されるこの「わくわく」とは何だろう、と考えてみました。

★我々はつい、去年これだけ売れたから今年もこのぐらい仕入れる、と考えがちだが、去年と同じものではわくわくするはずがない。前年比主義に陥らないよう、より自戒せねばなるまい。

★とはいえ、変わらぬものを長く売り続けたいという姿勢も捨てたくない。要はわくわくの陳腐化をどう防ぐかだが、手持ち駒の引出しを時々は閉めておいてしばしお休み中という展開手法があっても良いのかも。

ITの普及で、手に入れられる情報量は加速度的に増えている。なのに我々の小さな発信にわくわくしてくれる。「情報」と一口に言われるが、大量の報(data)に迷い悩むばかりの中で、出所の確かな情(information)は、今では貴重なのだろう。報が北風なら、情は太陽なのかもしれない。

★お客様がわくわくするのは、我々が感じたわくわくをお客様に伝えられたからに他ならない。では我々は何にわくわくするのか。この一年を思い返すと、決してモノだけをとらえて感動したのではなく、モノを作る「職人」、職人と商人の間の通訳をする「仕掛人」、時代を嗅ぎ分けられる「目利き人」、そういったヒトたちとの様々な出会いが我々をわくわくさせてくれた。 そう、モノには必ずヒトが携わっている。その携わり様にわくわくするのだ。

 今年も、いっぱいわくわくしましょう。よろしくお付き合い下さい。



倶樂部裏話 [3] Thank you, anyway (2002.4.27.)


我が娘たちは、小さい頃、「お父さんは、仕事をしないで、いつもお店でお客さんと遊んでばかりいる。」と見ていたようです。

我々小売業などの接客商売は、他のビジネスと違って、一般の消費者を相手にする仕事です。今風にいえば、B to Bではなくて、B to C だということですが、このB to C の特徴は、Bのこちら側はビジネスであるのに対して、Cのお客様側はレジャーだという点です。ビジネスにはいろいろなルールがあります。挨拶、身なり、納期、支払い、などなど。しかし、相手方はビジネスではなくレジャーであるのですから、同じルールを相手方には求められない、という性格を持っているわけです。
同じ接客業の中でも、利用したら必ず代金をいただける飲食業や宿泊業などと違って、物販業というのは、成功報酬型です。モノが売れて始めてその労働の報酬を頂戴できるわけで、遊園地や美術館のように入場料を徴収することもなければ入場者を制限することもできませんし、弁護士のように相談料をいただくでもなく、医師のように初診料を徴収することもないのですから、どれだけお客様にお努めしても、モノが売れなければ全く対価はいただけないということになります。つまり、空振りがあるのが当然、というのが、物販業の宿命だともいえます。

そう、何も改めて言うこともなく、当たり前のことです。お客様は遊びに来ているのだから、挨拶ができなくても普通のことだし、モノが売れなかったときだって、それはなにもお客様のせいではない、欲しいモノをご用意できなかった私どもが悪いのだから、むしろ、店からお客様に謝らねばいけないのだ。分かっている、分かっているが、しかし、私たちも人間、どこかで求めているのです、「Thank you, anyway.」を。

Thank you, anyway. という英語。たとえば、道に迷って通りがかりの人に尋ねたのに、運悪くその人では分からなかった、というようなときに、「(結果、私の役には立たなかったけれど、私のために尽くしてくれて) ともかく、ありがとう。」という気持ちで使われます。「役に立てず、済まない。」と感じている相手を慮って発せられるこの言葉に、相手はどれだけ救われることでしょう。

私たちがお相手するお客様は、店頭だけではありません。電話やファックスの時もあり、これらも接客の一種です。そして、最近多いのが、電子メールでの問い合わせです。メールでの問い合わせには、ある特徴があって、それは、問いが短ければ短いほど、答えが長くなる、ということです。  例えば、「○○について教えて下さい。」というだけのメールですと、「○○というのは、………という商品で、色は……、サイズは……、使い方は……、価格は……、」と返信は延々と長くなり、必要によっては写真を添付することもありますが、「私は、性別は…、年齢は…、職業は…、サイズは…、です。御店のホームページに載っていた○○を検討しています。」という問い合わせなら、「今ご用意できるのは……です。……をお奨めします。購入方法は……」と簡潔にお答えできます。
確かに、メールでの応答は、ほかの方法に比べて、極めて便利ですし、格段に説明が伝わりやすく、ご購入につながる可能性も高いのですが、その分私どもが返信に費やす手間と労力も、正直、店頭の接客以上にかかることが間々あります。 たった一行の問い合わせに、一時間以上掛けて返信を出し、更なる問い合わせを期待したのに、それきり何の返答もない、としたら……。私たちの落胆ぶりは想像していただけるでしょうか。せめて、「Thank you, anyway.」の一言さえあれば、と思ってしまうのです。

この文章を読める方は、インターネットを利用できるメンバーズの方に限られています。そして、当店に限らず、様々な問い合わせにメールを利用されることも多いのではないかと思います。様々な問い合わせに返信するほうの立場から、どうか、少しだけでも「Thank you, anyway. 」を気に掛けていただきたい、と、思うのです。

そして、いろんなお店で、接客を受けたときは、たとえ欲しいモノがなかった場合でも、「Thank you, anyway.」。労をねぎらわれたその一言で、販売員は生き生きと蘇り、次への活力が生まれます。接客業に携わる人間というのは、人と関わることの大好きな人種ばかりです。だからとても単純に、落ち込んだり喜んだり、してしまうものなのです。(弥)

倶樂部余話【155】紳士服と婦人服(2001年12月1日)


紳士物だけでスタートした当店ですが、徐々に増やしてきた婦人物との比率が、この冬で半々になりました。

同じ洋服でも、紳士と婦人ではかなり性格を異にします。婦人服出身で紳士に進出した同業者からは「どうして男ってのは、こんなにノロいのか。」とよく言われます。確かに、流行、入り方、売れ方、どれをとっても男の動きはかなりスローですし、物心ともに我慢強さがないとやっていけないのは事実でしょう。

それでは、逆に紳士から婦人へ進んでいる私はどうかというと、まず、婦人の市場にはあまりにも意味のない服が溢れている、と感じます。と言うのも、男の服というのはそれぞれに何らかの意味を持っているものだし、その意味を的確に伝えていくことこそ販売という仕事だと考えているからで、自然と婦人にもそれを求めてしまいます。 そしてその「意味のある女の服」が当店の特徴になったのではないかと思うのです。

男の方について厳しく言えば、どれでもあります、いつでもあります、の商売に店も客も今までいかに甘えてきたか、を実感します。 動きがスローでしかもサイズが多い、とあれば、キャッシュ&フロー重視の時代に生き残るのは大変です。

悔しがる男性もいれば、喜んでいる女性もいるでしょうが、婦人の市場規模は紳士の四~五倍あるのですから、半々というのは未だ紳士が健闘しているともいえますし、カップル客の多い当店にとっては、理想的状態だろうと思います。

例えばギフト需要など、紳士も婦人も両方あるからこそ対応できるという要素は随分とあり、それが現在の当店の最大の強みではないかと感じています。

 

倶樂部余話【154】化石な人(2001年11月1日)


私が「化石」と呼ぶものがあります。

例えば、IYドーが販売権を持つケント、洋服のAが商標を獲得したエーボンハウス、あるいは、雑誌のメンズクラブ。かつての栄光は認めますが…。

化石な人、という人種もいます。分かりやすくするため極端に言いますが、ノータックに固執し遂に2タックのパンツをはきえなかった人。過去の知識だけをひけらかせて、揚げ句に、欲しいモノがない、と怒ってしまう人。

メンズのファッションの流れはゆったりとはしていますが、今大きな変化の時期を迎えているところです。そして、それは再びノータックに向かって動いているのです。ここであなたは、その流れを吸収できる柔軟さを持てるか、それとも、流れに乗れず頑固に2タックを貫くか。ここが若さと年寄りの、進化と化石の分かれ目になります。

もっとも、当店は流れの最先端にいる訳でもなく、何も明日からすぐにノータックだけ、などとは言いません。 ただ、そういう流れにあるのだな、と踏まえていてくれればよいのです。

「買いたくても買えないんだよ」という男性諸氏の悲鳴が聞こえてきそうな昨今の経済情勢です。でも興味や関心までなくして欲しくはない。化石な人を増やしたくはないのです。