企画商品のご案内。「奈津井さんのスーツ」。汚職で逮捕された代議士に見えない、ノーネクタイで着ることを前提としたスーツ、を当店なりに考えてみました。

最新の「倶樂部余話」【293】を受けて提案します、
題して「奈津井さんのスーツ」、64,995円(税込)です。

★生地は、3柄用意しました。どれも葛利毛織(愛知県一宮市木曽川町)の生地です。
組成表示は、毛80%ポリエステル20%。精紡交撚糸と言って、ポリエステルの芯にウールを巻いたハイテクな糸です。
この糸を葛利毛織お得意の旧式なションヘル織機でスローに織り上げています。
普通ポリ混のスーツ生地ですと、シワにならない、通気性がいい、という点ばかりが強調されて、
生地の風合いは二の次、と言うところが多いのですが、
これはションヘルで織っているので、とてもしなやかでナチュラルにストレッチする、
夏には打って付けの素材です。

13ssnatsuisuit

3柄のチョイスは、無地っぽい柄物、で、
それでいて近頃のテカテカに光沢のある生地は避けています。
スーツとしてはもちろんですが、上だけ、下だけでバラしても着られる柄にしています。
どうしても下の方が先に傷んでダメになることが多いようなので、
その後も上だけで汎用性のあるジャケットとして着てもらえることを考えました。

①ピケ織りマイクロストライプ・ネイビー(3着分)
13ssnatsuisuitnavyp1

かなり濃い紺色です。

②ピケ織りマイクロストライプ・ブラック(3着分)
13ssnatsuisuitblk1

昨今のトレンドを考えると、ブラックの提案は欠かすことができません。

③バーズアイ柄、ダークブルー(4着分)
13ssnatsuisuitnavy1

紺系で無地じゃなくて無地のように使える柄、ということを考え抜いたら、
これに行き着きました。

★縫製は、M社。滋賀県と広島県に工場があります。
当店で言うところのバジェットラインの縫製をいつもお願いしているところです。

13ssnatsuisuit2 13ssnatsuisuitnavy2

上着は、肩パットなし、胴裏地なし、やや細めの衿幅、少し短めの着丈、に設定しました。
袖の裏地には、メッシュ状にして通気性を良くしたキュプラ(ベンベルグ)を使っていますので、
(あまりオススメはしませんが)万一、半袖シャツの上から着ても、ベト付くことはありません。
ボタンをやや明るめの練り釦にする、とか、
ステッチをちょっと目立つように幅を取るとか、
そういう工夫で、ジャケット単品としても着られるように考えています。
ただ、スーツとして着る、という大前提があるので、
袖付けを雨降らしのシャツ袖にするとか、ポケットをアウトにする、
というようなことは避けています。
組下(トラウザーズ)は、股上浅めのノータックで、裾幅19-20㎝ぐらい、
と単品としても充分格好良く履けるモデルにしています。
裾口の仕上げはシングルを推奨します。

価格は64,995円、と6万5千円で「御縁のお返し」ができるように設定しました。
ただ、この設定は、ちょっと当方も無理をしていますので、
先着10着限り、とさせていただきます。
納期は3週間弱ですが、
ゴールデンウィークに掛かるとその分延びますのでご理解下さい。

さて、以下は余談です。

汚職で捕まった代議士にならない、というのを枕詞にしましたが、
スーツ姿で逮捕した人のネクタイをすぐに外させてパトカーで連行される、
というような映像を、きっと皆さんよくご記憶だと思うのです。

これは、自殺を防ぐため、と良く言われていますが、本当はそれが目的ではなくて、
逮捕者が持っているブライドや権威をケチョンパにさせてしまうため、というのが真意なのだ、
と聞いたことがあります。

それほどに、スーツスタイルの中でネクタイが持っている意味合いは大きなものがあるわけでして、
だから、タイなしでスーツを着る、というのはホントはとても難しい、
もう難易度ウルトラCなんです。

それを、日本の夏、静岡は両替町で飲んだ帰りの赤ら顔の中年男性たちが、
もしかしたらこの人たちは飲み屋でネクタイを外して頭に鉢巻きでもして大騒ぎでもしてきたのか、というように
ガハハとご機嫌にノータイでスーツをだらしなく着ている様子を見ると、
やはり、そうじゃないだろ、クールビズとだらしなく着る、というのは違うはずだろ、
と憤ってしまうのです。

じゃあ、ちゃんと夏でもネクタイをしようよ、とは、
震災以降この二年、とても声高に言える状況ではなくなりました。

5月や10月ともなると肌寒い日もあるので、ネクタイしたい日もあるだろうに、
でも、職場のルールとして、5月から10月まではクールビズだからタイは御法度、
で、震えながらノータイだったり、と、ニッポンの働く場の決まりはとても硬直化しています。

ここに及んで、当店は考えたわけです。
だったら、格好良くノータイで着られるスーツをこっちから提案してみようじゃないか、と。

決して時代の流れに安易に迎合したつもりはありません。
顧客が当店に求めるものはなんなのか、
当店が顧客のために役に立てることはなにがあるのか、
を考えていって辿り着いたのがこの提案なのであります。

言い訳のような、老婆心のような、な余談でありました。