出来上がり紹介(クロージング編)。スーツ、ジャケット、トラウザーズ、シャツ。2024夏の仕上がり品の数々です。

ここで出来上がり紹介をしておきましょう。
まずクロージングから。

スーツとジャケット

フォーマルを作ろう!!に乗っていただいた、Sさんの略礼服。
生地はおなじみ葛利のカシミア5%混の定番素材、一体これまでに何着作ってきたことか。
いい意味で季節感がなく、そして何より黒の発色がいいんです。
せっかくだからちゃんと作りましょ、ということで、
ピークドラペル、ノーステッチ、ノーベント、両玉縁ポケ、拝みボタン、
ただ組下トラウザーズはベルトループ付きにしています。

Yさんからジャケット2着のオーダー。
まずはサックスブルーのマイクロハウンドトゥース。極小の千鳥格子だから万鳥とでも言うんでしょうか。どっかで見たことある、と思った方、はい、正解、私とお揃いです。
私の着ているジャケットを見て、それいいね、ということで、お作りしました。
この生地、実はスーツ生地のバンチにありまして、英ハリソンズの夏物Mystiqueからの一色です。
もう一着は、伊ロロ・ピアーナ、バラケからのチョイス、ウール、シルク、リネン、の3者混、
青みがかった杢グレーのベースに2×3インチのブロックチェックです。いつ見てもアルデックスの柄合わせはうまいですね。



Fさんの紺ジャケ。カノニコのウールメッシュ。この生地も夏のおなじみ素材です。
やや屈身があるぐらいでそれほど難しいご体格ではないのですが、
ディテールへの指示が細かくて、気を使いました。
内ポケットには右だけでなく左にも三角フタを付けて、
脇ポケには右のように左にも忍びポケ(切符入れ)を付けて、
衿穴は手かがりで、センターベントの重なりは1cm深くして、
と、初めて受ける修正もありましたが、SavileRowClubのラベルを付けるからには
間違いは許されません。アルデックスさん、すべてかなえていただき感謝です。


Sさん、フォーマルと同時にご注文いただきました、英ハリソンズのSeaShellモカブラウン色。
今シーズンキャンペーンを張りました、シワにならない麻、です。



綿パンを作ろう!!、で、その1は、Iさんから、紺のチノパンを洗って履きたい、というご要望で、
仕上がった後に一度水洗いをして縮ませてから裾上げをしています。


綿パンを作ろう!!、その2はSさんのサイド尾錠つきベルトレス。
生地はサマーツイル綿100%のサックスブルー。
左ピスポケなし、裾ダブル4.5cm,も、Sさんのシンボルディテールですね。


綿パンを作ろう!!その3は、Aさんのオリーブグリーンのストレッチポプリン。
4月に受けたご注文が3ヶ月かかってしまいました。
最初につまづいたのが、バラケから選んだ生地の要尺不足。バラケだから生地追加は不可能かと諦めかけていたのですが、なんとかハギレのような数10cmを探してもらって、制作継続。
ところが最終工程で工場がミシン操作を誤っておしりのポケットの付近にミシンの針を刺してしまうというミス。ウール素材ならスチームでカバーできる程度のミシン穴ですが、綿素材なので隠しきれない、それでもなんとかしようと、水蒸気をかけたり熱を加えたり、それが更に状態を悪くして、もう修復不能に。こりゃ生地を最初から選び直して作り直すしかないと、Aさんに連絡すると、体調を崩して入院中とのこと。退院後にもう一度ご来店いただいて新たに色違いをチョイス。急いで仕上げてようやく出来上がったのがこの一本。大変お待たせしてしまって、Aさん、すいませんでした。



リンクルフリー・フェアでのシャツ。
高校3年間は一つ上の厳しい先輩、なのに大学4年間は楽しい同期、のテニス仲間、Kさんから、夏恒例の半袖二枚のご注文。さん付けなのにタメ口、は、この7年の因果です。
続いて白2枚はIさん。上はピンOXでニューセミワイド、下はツイルでドレスBD。前立のステッチ、背中のプリーツに違いを付けています。
薄いラベンダー色のワッフル素材は、製薬会社お勤めのKさん。転勤の多いKさんですが、帰省のたびに時間を見つけてご来店いただいてます。やや開き気味のBDは、この頃増えているNewセミワイドBD版です。


長年の顧客のNさんとご結婚されたMさん、オケでホルンを奏でるそうで、
動きやすく、ニット素材で七分袖のシャツです。レディスらしく、カッタウェイラウンドの衿で、梅花のボタンを付けました。


Yさんご夫妻からリバティプリントの半袖3枚。
左はメンズ、かのウィリアム・モリスのいちご泥棒。綿ローンの素材なので、裏前立&ホリゾンタルワイドで。
中央、メンズのリネンのプリント。植物図鑑のような色柄で白地なので、レインスプーナーっぽく、アメリカンなNewショートレギュラーという新しい衿を付けまして、前立もしっかりとステッチの効いた表前立てに。
右はレディス。リネンの色違いです。色違いのペアルックで、夏はどこにお出かけでしょうか。


同じくYさんから、お仕事用の3枚。変わらぬサイズ、変わらぬカタチ、で、
左の2枚はカリビアンコットンSilver100/2Gのオックスフォード。濃いブルーと白。
ピンクだけは濃い色にしたくてグレードを上げてGold120/2GのOXをチョイスしました。


メンズのように見えますが、ショートラウンドの衿、梅花のボタン、細い前立、で、レディスとわかります。Kさんのご注文。
生地も綿100に見えますが、リネン混、しかもカリビアンコットンGold120/2Gとのブレンド。
これは絶対に着心地がいいはず。
これで夏を乗り切りましょう。

と、まずはここで一区切り、です。シャツはこの後、エコノミー・サービスへと続きます。
続いて、別稿で、カシミアセーターの仕上がり、さらに値上げ前の駆け込みがありました靴の仕上がりをご紹介します。


生地が届いたので、最終のご案内。明日から。シャツを作ろう!!~エコノミーサービス。7/4(木)~7/22(月)。臨時休業日にご注意ください。

POPも作り直しました。

7/6(土)、最初の土曜日なのに臨時休業です(但し荒天時は14時までやります)。
ご注意ください。
その他、画像内のカレンダーの✕印日は店休日です。


手違いで生地が一日遅れて届きました。急いで準備しました。

ストライプ

チェック

無地もあります。

ブルーだけ集めました

白の無地、無地っぽいもの、ドビーストライプ、の順。ハサミはピント合わせ用です。
でも、さすがにわかんないかな。

最後はスワッチ。お忘れなく。

で、今年は衣装ケースに収めました。こんな感じ。


そろそろ明日のアポが入ってきてます。ご予定が決まりましたら皆様早めにご連絡ください。

先日ファクトリーから知らせが届きまして、オーダーシャツは8月から一律2,000円の値上げ、との連絡が入りました。
エコノミーサービスのこの企画はその対象からは逃れましたが、
来年度からの値上がりは必至でしょう。
純国産のオーダーシャツが税込1万円以下で注文できる、今回が最後の機会になります。

是非ご予定ください。



月例エッセイ「倶樂部余話」を更新しました。同時にメルマガ発信しました。

メルマガ会員の方々にはすでに届いているはずです。文字化けなど不都合がありましたらご連絡ください。
今回は、画像添付が多く、倶樂部余話の専用ページではうまく貼り付けができていないので、こちらにも以下に掲載します。

倶樂部余話【429】 新しいウェルドレッサー (2024年7月1日)
 何気なくニュースを見ていると、訪英中の天皇皇后夫妻がオックスフォード大学を訪れている画像が目に入りました。


ん、このネクタイ、オックスフォードのクレストじゃないかな、
新天皇なかなかやるじゃん、と、つぶやいたら、隣りにいた妻から、何を上から偉そうに、と注意されました。でもパッと見て一瞬でそれがわかる人間はあんまりいないんじゃないかな、と思いましてね、嬉しくてつい上からに。

 もう一度その姿をじっくり見ますと、なかなかいいんです。トラウザーズの裾口は幅も丈もとてもスッキリしている、袖丈も長すぎず袖口から覗くシャツの出方も理想的、首、胸、胴に余計な余り皺がなくてよくフィットしている、腕の前振りの仕立てもすごくうまい、着丈は今どきにやや短め、衿幅もボタン位置も同様にグッド、腕に出ている皺は自然な動きで出る皺なので問題なし、と、実に非の打ち所がないんです。
それでいてやり過ぎ感もない。スーツの着こなしの原則はアンダーステートメント、控えめな主張、ですから、100点を超えたらむしろマイナスなんです。つまり99点が最高。
正直、見直しました。どこまで上からなんだ、ってまた横から言われます。

 改めて他の画像も見てみることに。まずネクタイのことから言うと、これです。
ストライプの向きは英国式(右手側に下がる)と米国式(左手側に下がる)で逆になるのですが、当然ながらこちらは英国式。できたらディンプルは入れて欲しいなぁとも思いますがそこは趣味の範疇です。
それはいいとして、このスーツは今ひとつ体に合っていないのがお分かりになりますか。どうも今回、2着の紺無地スーツを着回しているようなのですが、このラペルマウスが小さい方のスーツはきっとちょっと前に作ったものなんでしょうね、歩いている時の写真を見ると着丈も裾もちょっと長めで肩周りに余計なシワが出ています。
面白いことに日程を調べてみると、この2着のスーツを交互に着ているわけではなくて、夫婦での行動のときには新しいスーツを、単独行動の日には第二のスーツを、というように使い分けているのです。二人のときと一人のときでスタイリストが違うのか、とも考えられますが、私の解釈はこうです。カギは新英国王チャールズ3世。この国王は、かなり若い頃から、新しいものを次々に買い替えるのではなく、古いものを直しながら長く使い続けることを美徳とするポリシーを持っています。革靴に空いた穴まで継ぎ当てで補修して履き続けるので、この継ぎ当てを称してチャールズ・パッチという言葉ができたぐらいです。
そんな新国王への敬意からあえて新旧の分かる2着のスーツを用意したのでは、という私の読みは穿ってないでしょうか。これも上から過ぎ?

他の画像も見てみましょう。これはタラップを降りてきた最初の服装。この色、お二人ともお揃いでジャスパーブルーですね。珍しくシングルカフのシャツにカフリンクスを付けていますが、これはきっとネクタイの色とお揃いのウェッジウッドのカフスなんだろうと想像できます。ウェッジウッド、以前はアイルランドのウォーターフォードクリスタルに吸収合併されましたが、今はロイヤル・コペンハーゲンと同じ北欧の商社の傘下になっています。つまりとっくに英国の経営ではないのですが、もしかしたらなにか皇室に強いコネクションを持っているのかもしれません。そう思わせるほどにこの色の印象は強いですよね。

これはV&A子供博物館での画像。薄紫ピンクのドレスとタイがお揃いです。メンズの白いシャツには難しい色ですが、うまく着れていますね。このおソロ法は婦人同伴のときのテッパンでしょう。

 そして無事ご帰国に。オックスフォードから直行だったようで、着替えてないですね。ここでもシングルのシャツにカフス、好きなのかな。見えないけど今度はあのクレストのカフリンクスなんでしょうね、きっと。

 五年前、平成から令和に変わるときに、どうかウェルドレッサーのお父上を見習ってね、と願いを込めて書きました(倶樂部余話【365】参照) 。
https://www.savilerowclub.com/yowa/archives/611

もう安心です。令和のウェルドレッサー、2こ下のナルちゃん、これからも期待してます。
って、どこまで上からなんだ、もう。(弥)