当店で革小物類といえば圧倒的なシェアを持つのは、英国のホワイトハウス・コックスですよね。
20年以上も前から扱い続けてきて、私自身も「育ててきた」という自負があります。
もちろん素晴らしい商品の数々ですが、
「でも個人的には国産のこっちの方がいいと思うんだよね」という物がいくつかあって、
それだけはキプリスの商品を仕入れているのです。
★ボックスカーフの名刺入れ…3面一枚取り・底部は中折れマチ。20000円(税別)。
「名刺入れこそ一番いい物を持ちたいものだ」と言うのが私の持論です。
何しろ、財布や手帳よりも他人の眼前に見せる機会が多く、しかもそれが仕事上の取引相手と初対面というケースが圧倒的に多いからです。
しくじったら取り返しの付かないほどの最も重要なビジネスシーンを、
名刺入れは常にあなたと共にするわけです。
私が30年以上使っているのが、これと全く同じタイプのものです。
革は仏アノネイの最高級ボックスカーフ。
これを3面、つなぎでなく一枚革で、
菊寄せなどの江戸伝来の技術を惜しみなく使い、丁寧に仕立てています。
これは底部のマチを、中折れマチという一番手の掛かる大変な折りマチで処理するから出来る芸当です。
繊細でスッキリしているのに、抜群の収容力、それていて丈夫で長持ち、と、
30年使っていてひとつの不満もありません。名刺入れの王様です。
お勧めカラーは当然クロです。
★レーニアカーフ(素仕上げ)の名刺入れ…側部は風琴マチ。8000円(税別)。
ポックスカーフほどのグレードと収容力は必要ない、ということなら、
第二候補としてお勧めする名刺入れがこれです。
私はこれを長女の就職祝いのひとつとして与えました。
特徴はアコーディオンのような、その名も風琴マチ、
こういうふうにマチが外へ向けて付いていないと、たくさんの名刺が入らないのです。4色展開です。写真はワイン。
★レーニアカーフ(素仕上げ)の束入れ(長財布)…側部は風琴マチ。16000円(税別)。
私がかつて「落語・芝浜の財布ってこういうのだったんじゃないか」と言ったのがこの束入れです。
菊寄せで細かく縫われているので、
たとえ百枚のお札を入れて背広の内ポケットに納めても、角が当たったりせずふんわりと身体に沿うように曲がってくれる、
理想の長財布としての使いやすさは、江戸古来の技術のたまもので、
かつては着物の帯の腹に入れられていたということを聞くに付け、私は芝浜を連想してしまうのです。
4色展開で、写真はブラック。
以降は後編に続く。