左から、オリーブグリーン、利休鼠(Lovat)、コーン、ネイビー、ブラック。
これは洗う前、届いた時の状態。4年連続のオリーブが一番弱気な発注なのがバレてしまいます。
袋入りハンガーから取り出し、タグを外して、ひっくり返して、形を整えて、洗って、一時間高温乾燥機にかけ、またひっくり返してジーンズたたみ、大きなシワを取るためアイロンを掛け、またスラックスたたみに戻し、タグを付け直す。
4年目ともなると手慣れたものですが、それでもまる二日かかりました。おかげで良い風合いになりました。裾丈はやっぱり3cmほど縮みました。
タテに積みました。
昨年度の記事を加筆訂正しつつ2024年の解説文といたします。
コーディングスCORDINGSは、1839年創業で180余年の歴史を誇る、
ロンドン・ピカデリーにあるブリティッシュ・カントリーウェアの専門店。
私も何度行ったかしれません、いつも冷やかしばかりでしたが、ずっとずっと憧れの店でありました。
一度経営危機に陥ったとき、この店の大の顧客であったエリック・クラプトン氏が支援を引き受け、
現在もE.C.が筆頭の大株主として経営を支援していることも、この世界ではよく知られた話です。
そのコーディングスの商品をまさか自分の店で売ることができるなんて、
夢にも思ってませんでした。
4年連続の入荷、モールスキンのトラウザーズです。
生地は当然というか必ずというか、英国ブリスベン・モスBRISBANE MOSS、の生地です。
英国の生地と言えばスーツやジャケット生地のような毛織物が多いのですが、例えば西ヨークシャーの名だたる毛織物のミルももともとは綿織物から創業したところも多く、
いわば、ブリスベン・モスはかたくなに綿織物を守り続けた稀有なブランドとも言えまして、
特にこのモールスキンは、他社の追随を許さないブリスベン・モスを代表する素材といえます。
英国でモールスキン(モグラ肌、の意)といえば、ブリスベン・モス、このヘビーな素材以外にありえません。
今年のモールスキンの展開は過去最大の5色です。
まず新色のコーンCornから。
コーンCorn。とうもろこしです。入荷時はまさにもぎたてのように艶っぽかったですが、
洗いをかけたら、コーンポタージュのようにまったりとした色合いになりました。
昨年までのキャメルよりもさらに明るくなります。参考までにキャメルも載せてみますね。※キャメルは今年はやってません。
コーンのように明るい色は初めてなのでちょっと冒険ですが、
事前の予約状況はとてもいいので、リピータを中心に引き合いも強いかと期待しています。
次は昨年の新色、2年目の利休鼠です。
この色、印刷や画像だとなかなかうまく伝わらない色なのです。しかも英国の色名がLOVATですが、
我々がツイードなどでよく知っているロバットグリーンとは全く似てない色なので、
こりゃ混乱するよな、ということから、当店はイメージとして捉えて欲しくて
勝手に利休鼠と名付けました。
茶人・千利休が好んだ茶器の色で、緑がかったねずみ色を指します。
こういうネズミがいるわけではないので念のため。
試みに利休鼠で検索をしてみてください。この色合いが理解できるはずです。
ボタンフロント、ベルトレス、ブレィシス(サスペンダー)釦付、は、
ジッパー発明の前から続いてるんだぞ、のコーディングスの矜持みたいなもんでしょうか。
シルエットもクラシックで、股上深めでそれほどに細身ではありません。
でも裾幅20cmですから裾周りはスッキリ、です。
ウェスト仕上がりもサイズ表記と比べるとやや大きめです。
3色目はオリーブグリーン。一番モールスキンらしい色と言えるでしょうか。
まずは最初に一本持っておきたい色です。つまり、4年目の今年、すでに行き渡った感もあるので、
入荷本数は少なめです。
ベルトレスですが左右にゴム入り(背中部分にあり表からは見えません)のアジャスターがあり、
6cmの調整が効きます。
ベルトレスと言うと抵抗を示される方も多いのですが、それが違うんです。私も4本買って
履いてみて感動したのがこのベルトレス、ゴムとアジャスターのおかげで、
ホントによくフィットするんですね、まさにベルトいらず=ベルトレス、であります。
6cmも調整できるので、多少太ったり痩せたりしても、大丈夫です。
お持ちの方も多いでしょうが、濃紺というよりもやや明るめのネイビーで、
洗ったあとの色合いがとてもいいのが気に入っています。
画像では赤みのあるように見える方もいらっしゃるかと思いますが、決して紫っぽくはありませんのでご安心を。
最後は当店での新色、ブラックです。
エージェントにあったサンプルがだいぶ使い込んでチャコールっぽくなっていたので、
今まで発注を手控えていたのですが、これは私の食わず嫌いでした。
届いたときのブラックは、まるで別珍のように光沢がありましたが、洗ったらかなりヘタってくれました。とは言えチャコールほどに減色はなく、いい感じにクロになりました。
ただ、ネイビーと比べるとやはりちょっとモードっぽくはあります。
なお、聞いた話ですが、本国の方でもブラックは定番色という捉え方ではないようで、今年度は一時廃番色の候補になったらしい、ということで、この色もいつまでも続くとは限らないと考えたほうが良さそうです。
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さてここからは当店独自の施しになります。
洗濯表記がドライクリーニングのみになってますが、
モールスキンは元々が冬の作業着から由来する素材、洗ってこそ味の出る素材です。
でも洗うと縮みそうだよなぁ、ということが心配になりまして、
日本で一番コーディングスに詳しい富山のKさんに電話をかけて相談しました。
彼は実際にロンドンのコーディングスに勤務し、販売と仕入れを経験しており、
帰国後も、長年に渡りブリスベン・モスのモールスキンの取り扱いを続けているので、
彼の意見をぜひ聞いてみたかったのです。
で、彼の意見を取り入れた上での当店の結論ですが、
全部一度洗ってから販売する、ということにしました。
これ以外の方法は考えられませんでした。
案の定3cmほど縮みまして、また当然風合いも変わりました。あたりが出ていい感じに古ぼけました。
タイトルの総合写真もワンウォッシュ後のものです。
サイズ表です。エージェントの資料にウェストの調節幅や数字の単位を手書きで書き加えました。
たとえば普通は32インチだと81cmが通例ですから
こいつがやや大きめの仕上がりだとお分かりいただけるでしょう。
それから、もう一つ、一昨年からのことです。
フロントのボタン付けが甘いことがあるので、裾上げ加工のときに必ずボタン付けもチェックし、
付け方の甘いボタンはしっかり補強をすることにしました。
小用で構えたらアサガオにポトン、じゃ、笑い話にもならないですから。
最後に価格です。
英国物は値上がりが激しく、今年の価格が34,000円(税別)となりました。
加えて、当店独自の施工として、洗いと乾燥、プレス、裾上げ、ボタン補強、を施しますので、
加工料として1,400円の加算を申し受けます。(この加算はエージェントの了解を得ています)
ですので、当店での提供価格は38,940円(税込)となります。どうかご理解ください。
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サイズ切れが起きやすい商品なので、色、サイズ、別の詳細な在庫は
webShopに反映させます。
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※通販時の裾上げについて。備考欄に股下寸法をご指示ください。裾上げいたします(ミシンたたき三ツ巻仕上げ4cm幅)。ただし裾上げ加工後の返品や交換には一切応じられませんのでご了承ください。
返品交換の可能性があるなどで、裾上げ&ボタン補強をしない場合には、550円を値引きします。
裾上げの目安です。参考までに。
まだもう少し縮むかも、ということで、ややクッションする程度に長めにピンを打ちました。
余談。この秋のE.C.は南米をツアー中だそうです。また新譜も発売。ジェフ・ベックやヴァン・モリソンとの共演も聞けるようです。ジャケット写真、どっかのちっちゃなハンバーガーショップでアメリカンコーヒーを前にするE.C.。言われなかったら全くフツーのおっさんに見えます。でも洗い込んだウェスタンデニムシャツのかっこいいこと。
E.C.と同じようなギターはとても弾けないけど、E.C.と同じズボンは履いてるよ、私、今年は5本目を買います。