10年目です。おんなじ物がよくこれだけ続くものだと、自分でも驚くほどですが、それだけ続く理由は、みんな一枚では終わらない、ということなんです。
だからこちらも調子に乗って、6色持とう、を呼びかけたりしています。
ハーレィHarley of Scotland ,Voe True Shetlandのシリーズです。
カタチは一つだけ、丸首プルオーバー。継ぎ目のないシームレス・ホールガーメント。
糸も一種類だけ、シェトランドシープの産毛で、染めてないナチュラルの糸、VoeTrueShetlandという登録名を持っています。
糸の太さが3種類。2plyと1plyと4ply。プライplyというのは撚り(より)のことで、2本撚り、1本撚り、4本撚り、という意味です。
色はどのplyも6色あり。どれも染めていない羊本来の色です。White(ホワイトシープ)、Silver(シルバーシープ)、Fawn(子鹿の肌色)、Moorit(ムーアの台地)、Grey(グレーシープ)、Black(ブラックシープ)。
つまり、3つの太さ、6つの色、で、3×6=18種からの選択です。
今年のサイズ展開は、38”(メンズS)から44″(メンズLL)の4サイズです。
以下、昨年の原稿を流用修正しつつ、解説します。
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ここでは一番薄くて軽い1plyを取り上げます。20,900円(税込)。
10年前にこのHarleyのVoeTrueを始めたときには、この1plyでスタートしました。
10年前の初登場のときの記事、今読むと懐かしいです。
このときはFawnが売れ筋で、その後Silverが追加登場してからはSilverがダントツでよく売れました。
だから、1plyでは、FawnとSilverの2色は持ってる人が多いんですね。
いっとき生産休止になった期間があり、それで当店も2plyを始めたんです。
実は、VoeTrueシリーズの真骨頂は1plyにこそある、と、今でも私は思っています。
そもそもヒラリー卿がエベレスト初登頂の際に着たというのは1plyで、
これを下着のように着たと言われています。
薄くて頼りなげな細い糸をふんわりと上手にホールガーメントで編み立てるハーレィのテクニック、
首のゆるさや腕の細さは、ジャケットの下の重ね着にドレスっぽくも着られるし、
逆に、白Tシャツにダイレクトに着て、スウェットっぽくカジュアルにも。
カシミアとは正反対のワイルドな素材なのに(価格も正反対ですが)、
カシミア並みの包まれるような暖かさを醸し出してくれる、
VoeTrueShetlandの魅力を一番引き出しているのは1plyだと確信しています。
ただ、リブをフィニッシュしている留め糸も細いので、脱着は丁寧に、を心がけてください。
1plyの展開、今年は全色展開で6色です。
色の説明、サイズ感、などは、2plyの項もご覧ください。
また4plyの項目はこちらです。
※White
真っ白ではなくて、黄みがかったナチュラルです。
1plyでwhiteは、透けます。透けたっていいじゃん、という方にだけお勧めします。
赤いギンガムのシャツの上から40”を着ています。うっすら透けてますね。
平置き写真でも、タグが透けてますね。
※Silver
ライトグレーの羊です。
過去に一番売った色なので昨年の発注は手控えましたが、今年から再開です。
40″を着ました。1plyは2plyよりも小さく感じます。
※Fawn
子鹿の色です。
42″をTシャツの上から着ています。
私(身長165cm体重68kg)には少しだけ大きいです。
※Moorit
ムーア。赤褐色の荒湿地。これも1plyでは2年目です。
44”を着ています。やや大きいですが、1plyだと薄手なので、さほど気になりません。
※Grey
グレーと言うよりセピア色です。
38″を着ました。ピタピタでちょっと無理くり感あり。
※Black
ブラックと言っても黒い羊の意味です。ブラックの1plyも2年目です。
これをブラックと呼ぶのは違和感ありますね。ブラックシープですから。
あ、時々やむなくモデルになっている私の体型、書いておきます。
身長164cm体重73kg胸囲96cm胴囲(スラックスのサイズ)88cm,腕は短くてシャツの裄丈で78cmです。
なので40”でゆとりなしのフィッティング、42”が適度なゆとりの最適サイズです。
ただ、1plyはとても薄手で、2plyよりもまとわる感覚があるため、
2plyよりもひとつ大きいサイズも守備範囲に入れていただいていいでしょう。
最新の色サイズの在庫状況はwebShopにてご確認ください。
そのままご購入へも進めますので是非。
さあ全色揃った人はいらっしゃいますか。
さて、毎年のことなのでおなじみになりましたが、
Voe True Shetland について、もう少し詳しく話します。
実はかつての店の裏スペースにこんなポスターが貼ってありました。
ある方から譲ってもらったもので、シェットランドシープ63種が描かれています。
このポスターを制作したShetland Sheep Breeders Groupのサイトから
参考になる話がいろいろあります。
Voe というのは、Shetland本島にある固有の地名でも存在しますが、
一般名詞として、フィヨルドのような深い入江を指す言葉です。
で、このいくつもあるシェトランド島のvoeの一帯で、育てられているこのポスターのようなシェトランドシープのバージンウールだけを手作業で丁寧に刈り取って羊毛糸にしたもの、
それが、Voe True Shetland です。
一般的なシェトランドシープは割と硬めの風合いなのですが、
Voe Trueは子羊のバージンウールですので細くて柔らかい、独特の味わいが生まれます。
この羊毛を一躍有名にしたのが、1953年のエベレスト初登頂で、
ヒラリー卿が下着のように着用していたセーターがこの羊毛でできていました。
シェトランドシープには、ポスターのようにいろんな色の羊がいますから、いろんな色ができるのですが、
これを1927年に統一した基準を作り、12の色に分けることになりました。
もちろんどれも染めていない羊本来の色です。
今回仕入れた6色もこの12色のうちからVoeTrueShetlandのブランドが採用を決めた色となります。
ココ、大事なことです。つまりVoe True Shetland には無染色のナチュラルカラーしかないのです。赤や緑のカラフルな色は存在しません。
ところが、です。Voe True Shetland で検索を掛けると、いろんなセーターが引っ掛かります。これは、いろんな人がろくに調べもしないで安易に人の書いたものをコピペして流用し、しかも誤った適用をしたことから起こったことです。
ちゃんと調べればすぐにわかることなのに、それを怠っているのです。
もう一度言います。Voe True Shetland に、染めた色はありません。白も黒も例外ではなくこれも無染色なんです。
それから、HarleyではVoeTrueShetlandの羊毛以外にもいろんな羊毛を使ったセーターを製造しています。一番多いのはShetland Woolを模したsupersoftという糸で、これにはとてもたくさんの色があって、その中にはVoeTrueととてもよく似た色もあります。しかし当然ですがそれはVoeTrueとは異なるものです。
Voe True Shetlandで編んだセーターには必ずVoe True Shetlandの提げ札が付いています。
Harleyのセースルパーソンに聞いた話ですが、
Harleyの取引先は世界で300社ぐらいあり、そのほとんどが主力商品のsupersoftを中心に扱っていますが、VoeTrueShetlandの糸を採用しているのは世界でも30社ぐらい、とかなり少ないらしい。
カタチも色も限られていて毎年同じものばかりだから、バイヤーにとっては魅力が乏しいのでしょう。
中でも、他のものには目もくれず、VoeTrueだけの一本槍、というところは、彼いわく、
世界でもおそらくJackNozawayaぐらいのものだろう、という、言葉をいただきました。
コレ、自慢してもいいですよね