出来上がり紹介。靴を作ろう!! まず7足。


内羽根のストレートチップ・ブローグ入りES03。
半革のカカト化粧、中敷の刺繍、は、Sさんのお決まり。
今回はベルトも一緒にご注文です。


Kさん、ブーツでは私イチオシのサイドゴアブーツをご注文いただきました。
これ、ネイビーです。そう言われないと分からないほど濃い紺です。変わり色に挑戦第一号、感謝です。
雨の日も履けるようにタフスタッズのソールにしました。


何の変哲もないようなクロの一文字ですが、よく見てください。左右のサイズが違うんです。
左足は25.5E、右足が24.5EEに甲・小趾・母趾の3箇所に乗せ甲入れ、という、極度のサイズ違いです。
原因は分かりませんが、Yさん、ずっと、合う靴がないとお悩みでした。
そういう人にこそこのオーダーシステムは活用できます。


Nさんも、27.5の4E、と、なかなか迫力のサイズです。
オールデン・インスパイアの宮城デンの外羽根フルブローグです。
この革、変わり色に挑戦で、グリーンを選びました。


外羽根のプレーントゥ。Iさんも26.5のFという幅広の方。
ステアの型押しのクロ。ストームウェルトのダブル巻き、で、
ドスンとしたイメージを求めました。


その逆で、Iさんは大変細い足で、27Bです。
Bなのですが、そう見えないように、オフタイムの靴としては期待、ということで、
スコッチの型押しの革で、外羽根のアメリカンタイプなフルブローグ、ダブルソールにダブル巻き、
と、わざとイカツイ感じに作りました。


これ、私の靴です。私も3Eです。
20周年モデルの原型となったブローグ入りのサイドエラスティック。
グリーンとグレーのコンビ、という遊んだ靴にしてみました。
どっちがグリーンで、どっちがグレーか、最後まで悩みましたが、面積の広い方をグリーンにしました。
ストームウェルトを付けてカジュアルさを加えまして、
チノパンやデニムに合わせて、現在ヘビーローテーションで一日おきに履いてます。
思ってたよりも違和感はないです。毎日背負っている大人のランドセルもグリーンですから、
相性もいいわけですよね。

まずは前半戦の7足をご紹介しました。

 

 


出来上がり紹介。ジャケット、スーツ、トラウザーズ、シャツ。

ジャケット。

夏用の明るめの紺系統で出物があれば、と、お探しに見えたMさん、
バラケの中から見つけたのが、伊ロロ・ピアーナのヘリンボーンの生地、
ウール45%シルク35%リネン20%、の3者混の素材です。


この上衿のカーブを見ただけでファクトリーがわかりますね、那須夢工房です。

次はスーツ。手持ちの夏物グレンチェックがかなり傷んできたので、買い換えよう、という、
Iさんからのご注文。

これもバラケ物からのチョイスで、やはり伊ロロ・ピアーナのグレーベースにブルーの差し色の、チェック柄。
1%のポリウレタンで、ストレッチが効いてます。ファクトリーはアルデックスです。

トラウザーズ。

ブラックウォッチのパンツが2本、Mさん。
左は英国製のウール。かなりの大柄になるので柄合わせが手作業になります、と、
ファクトリー(M社)から割増請求がありました。
右は日本製のコットン。ちょっとヘビー目の生地です。Mさん、水洗いはしない、ということでしたので、
膝裏も付けて、裾もダブルにしてみました。

これは私・野沢の。英国空軍が開発した防水素材ベンタイルの日本製ライセンス生地で作りました。
手持ちのオリーブグリーンの綿パンが、ヘビーユースで傷み始めてきたので、
こりゃ早めにもう一本手当てしておこう、と、トラウザーズを作ろう、に自ら参加しました。
まだ大雨に合ってないので、その防水効果未検証です。
水洗いできるように、膝裏も付けず、裾仕上げも三ツ巻のミシンたたきです。

シャツ。
リンクルフリーウェアとエコノミーセールのはざまなので、
今回はレディスの一枚のみです。Oさんから。

白ベースにグレージュの、夏らしいチェック、
綿65%に指定外繊維(ヘンプ)35%の素材。
ヘンプは日本語では大麻になるので、間違ったイメージを持たれがちですが、
近年は農薬も殆ど使わず成長も早く何度でも収穫できて、大変エコロジカルな素材として再注目されています。
もちろん、日本では栽培自体が禁止されているので、繊維取得目的にちゃんと管理された海外の農場で栽培されているものです。
更にややこしいことに、日本では麻というと亜麻(リネン)と苧麻(ラミー)しか認められないので、
ヘンプは指定外繊維というなんか「非通知」みたいな怪しげな呼び方をされてしまうのですね。

さて、この先は、「靴を作ろう!!」の期間になりまして、
靴が続々仕上がってきてます。


 

 


【重要】今季のアランセーターの販売方法、ドラフト方式、について。


在庫一覧表を見ていただくとおわかりのように、すでに新しいアランセーターが続々と追加掲載されています。
価格も改定しました。かなり上げざるを得ませんでした。すいません。
また、倶樂部余話にも書いたように、これからも、貴重なセーターが続々と入荷の予定です。
掲載して紹介もしてどんどん見ていただきたいのですが、しかしながら、今のところ、8月下旬までは販売休止となっています。
で、以下のように進めます。
8月下旬には今季のアランセーターがほぼ全て揃う予定です。それまではサイトを整えたりしながら、準備します。店内にもセーターを持ち込んでおきます。
実物の見学も問い合わせもできますが、販売は休止のままです。
ある程度揃った時点(9月1日予定)で、まず予約受付を解禁します。来店でもwebでも同じです。9/18(月祝)締め切り予定で、応募者多数の場合には抽選とします。
プロ野球のドラフト会議みたいなので、ドラフト方式、と名付けました。
抽選が終了しましたら、それ以降は従来どおりの販売方法、つまり早いモノ勝ち、とします。

今季はアランセーターの調達先や手段が多岐にわたり、入荷時期もまちまちであること。
価格もかなり上がっているので、全部が揃った時点で、しかもじっくりと検討していただきたい、という思いがあり、
早い物勝ちやオークション、ということにしないで、日本全国の興味のある人たちに平等に入手機会を設けたい、ということで、
こんなふうに決めました。



倶樂部余話を更新しました。メルマガも発信しました。

アランセーターの販売にも関係することなので、今回は以下にも転載します。
また、本日月初日なので、月例のメルマガも発信しております。届いてないよ、という方は、お手数ですがご連絡ください。

倶樂部余話【418】Wing and a Prayer (翼と祈り)(2023年8月1日)

 アイルランド国立博物館の別館、カントリーライフ館は、アイルランド西部メイヨー県の県都キャスルバーに2001年に開館しました。ここには古いアランセーター11枚が収蔵されています。元々これらのセーターは首都ダブリンでCleo店の向かいにある国立博物館(本館)に古くから収蔵されていたものをこの別館のオープンに際して移送したものです。

 私のアランセーターの本が1996年の着想から出版まで8年もかかってしまった一番大きな理由は、この11枚のセーターを取材するためにはこの別館のオープンを待たねばならなかったからでした。ダブリンに保管してあった時期ならばCleo店がそうしていたように割と簡単に頼めば見せてもらえたのでしょうが、私が見たいときに運悪く保管と修復のために非公開の遠い場所に移されてしまったのです。

 6年待って、ようやく対面できた11枚のセーター。飾られているものだけではなく、ストレージに厳重管理されているものも学芸員の特別な配慮で拝見することができて、資料もたくさん頂戴し、ようやく私の執筆も進んだのでした。 これらの古いアランセーターはその後2008年のアランセーターの特別展の際に初めて一堂にずらりと並んで展示されました。この展覧会は世界で初めてアランセーターにスポットを当てたもので、嬉しいことに、私が日本での百貨店催事に際して作成した小冊子も一緒に展示されました。

 そのまさに博物館級のアランセーターの中で、ナンバーワンの評価を得ているのが、1942年に本館に寄贈された通称Wing and a Prayer (翼と祈り)と呼ばれる一枚です。80年以上も前にアラン諸島で編まれたものですが、前後左右非対称の複雑な編み柄、特殊な袖付、すべてのバランス、編み手の愛情と技量とに溢れた史上最高傑作と言えるでしょう。

 余談になりますが、このWing and a Prayerという呼称、このセーターに施された、翼のような、祈るような、中央の柄が印象的なのでそう名付けられたようですが、寄贈当時アメリカで流行していたジャズボーカルの曲名でもあり、それに併せてこの題名の航空関係の映画が作られたり、また奇しくも同名タイトルのドラマが偶然にも今年2023年に公開されたりしています。また、wing and a prayerというのは米国ではよく使われる慣用句でもあるらしく、運を天に任せて祈るしかない、一か八か、という意味があるようです。歌も劇もそれに引っ掛けた内容になっているのですね。便利な時代で、wing and a prayer で検索するといろいろ出てきますので、ご興味ある方はどうぞ。

 私はこの国立カントリーライフ館を3度訪問し、その都度学芸員のクロダ・ドイル女史から説明を受け資料の提供をしてもらいますが、いつも、デザインの盗用や商業的な宣伝物に使用されることのないように十分に注意してください、と、念を押されます。まぁ、真似しようにもここまでのレベルのアランセーター、そう簡単には真似なんてできっこないのですが。

 さて、ある時ある博物館から、このWing and a Prayerを展示ために貸してほしい、という要請が入りました。しかし貴重な一枚、もし何かあったら大変なので、レプリカ(複製)で良ければ、ということになりまして、その作成依頼がCleoに入りました。技量、経験、長年の博物館との付き合い、いろいろ考えると、Cleo以外にこの複製を引き受けられるところはほかにはないでしょう。相当苦労してようやくレプリカが編み上がった頃、そこにコロナが襲い、欧州はロックダウン。話はすべてオジャンになってしまいました。

 ある日CleoのFacebookでこのレプリカが販売されていることを見て、
私は驚くとともに心配になって、博物館モノを模倣したセーター、売って大丈夫、博物館の許可は取ったの、と、
Cleoに問い合わせたことで、このような経緯を知った次第。俄然むくむくと欲が湧いてきて、じゃあもう一枚レプリカを編んでもらったら、それ日本で売ってもいい?、と思い切って聞いてみたら、他ならぬ野沢の頼みであれば、との快諾。

ようやく編み上がって、今荷物は経由地のヒースロー空港にあるらしい。まもなく到着します。ただ、売り方は、早い者勝ちにはせずに、平等公平に機会均等に配慮してちょっと工夫しますので、どなた様もぜひご期待ください。(弥)

(写真はIreland National Museum Countrylife 提供)