入荷速報。モーン・テキスタイルMourne Textilesから新作スカーフ到着しました。

北アイルランドのモーン・テキスタイルMourne Textilesから到着しました。

ハタースリー・ルームHattersley Loomという英国製の古い足踏み式の手織り機で織られたスカーフで、
組成はメリノウール84%・カシミア8%・シルク8%。
サイズは幅30cm長さ200cm(フリンジ含む)、
価格は19,800円(税込)、
とここまでは昨年までと同じなんですが、
違いは色柄です。ちょっと説明が必要です。



全体を拡げるとこんなふうになっています。
経糸(たていと)は3分の1のところで薄いグレーと濃いグレーの2色を配し、
緯糸(よこいと)は3分の1づつ分割して、先端の3分の1の部分だけ色糸を施しています。
全部で6つの色相が現れていますが、
つまり3分の2はグレー系の色合いですべて同じでして、違うのは先端の3分1の部分だけの色付き部分。4種類あります。
まるで色を試作するマス見本のようだ、ということでしょうか、
先方ではサンプラーsamplerと呼んでいます。

畳むとこんな感じです。順番に解説します。

Sampler Red(赤) 色のコントラストが強めです


Sampler Aubergine(オーバジン=紫ナス) こちらのほうがコントラストは弱いです


Sampler Indigo (藍青) コントラスト強め。


Sampler Dusky Blue(くすんだ青) 4色の中で一番コントラストが弱いです。


Plain Pebble (石畳) スーツなどのドレススタイルにはチャコールの無地ライクなものも必要でしょう。


Rainbow2020 (レインボー)  コロナ克服への希望を込めてモーン・テキスタイルが急遽制作したチャリティスカーフ、2020年限定モノです(であって欲しいな)。
7つの色は単色のように見えますが複数の糸色が混ざり合っているので、思いの外落ち着いた色調に仕上がっています。

在庫状況はwebshopをご覧ください。

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もう一度、そのストーリーを再掲しておきます。
ブランド紹介はちょっと長くなりますよ。

モーン・テキスタイル Mourne Textiles


鍵になる人物は、1909年にノルウェーのオスロに生まれた
ジャード・ヘイエディGerd Hay-Edieというテキスタイル・デザイナーの女性です。
ジャードは12才でスペインに渡り、その後イングランド、ウエールズ、中国、インド、など
世界各地を渡りながらテキスタイルの技術を学び、
そして第二次大戦後の1949年にアイルランド東北部の
ドーン県Co.DownモーンMourneに小さなスタジオを構えます。
足踏み式の手織り機は生まれ故郷のノルウェーからも運び込み、
地元の女性たちに手織りの技術を教えました。

ジャードのファブリックは当初主としてインテリアの分野に供給されました。
英国のミッドセンチュリー期を牽引した家具インテリアデザイナー、ロビン・ディRobin Dayや
テレンス・コンランTerence Conranとの協業は長く続き、
またリバティLibertyへも供給がありました。
その後はファッションの分野へも、アイルランドのデザイナー、シビル・コノリーSybil Connollyやシーラ・マラリーSheila Mullally、
そして英国の大御所ハーディ・エイミスHardy Amiesとの協業と、
60年代70年代に大活躍した女性テキスタイル・デザイナーであったのです。

80年代に入り、大量生産大量消費の波に巻かれ、彼女のビジネスの規模は縮小しましたが、
仕事は娘のカレン・ヘイエディKaren Hay-Edieに引き継がれ、
英国マーガレット・ハウエルMargaret Howellのホームコレクションとの協業は現在に至るまで継続しています。

モーン・テキスタイルMourne Textilesという
アイルランドの地名を冠したファブリックのブランドでありながら、
今まで私がここを知り得なかったのは、
まず創業者の女性ジャード・ヘイエディGerd Hay-Edieがノルウェー出身であったことから、
北欧の、しかもインテリアファブリックのブランドとして認知され続けていたということが挙げられます。
また、その供給先は一般の小売店ではなく、名だたるインテリアやファッションのブランドであったため、
いわばそれらブランドの黒子的存在として評価されてきたことも一因でしょう。

さて、創業者ジャードの孫、つまり、後継者カレンの息子である、マリオ・シェラMario Sierraは、
生まれたときから祖母や母が動かす織機の音や羊のラノリンの匂いの中で育ち、
英国のアートスクールで学んだ後、世界を旅して、
そしてアイルランドに戻り2012年に家業を継ぐことになります。
祖母が手掛けてきた素晴らしいファブリックの数々のアーカイブを眺めながら、
これらがもう世界のどこにも見られなくなりつつあることを憂い、
これらを現代に残していくことを模索します。
ちょうど北アイルランドのアート・カウンシルが
伝統的な手織り技術を保存継承するためのファンドを用意していたため
その資金援助を受け、マリオは祖母ジャードの創造したファブリックの再興を目指します。
そして2018年1月、モーン・テキスタイルMourne Textilesは実に十数年ぶりに
アイルランド・ダブリンのショーイングに出展することとなったのです。


そこで私と出会います。
品物の素晴らしさはもちろんのこと、
私はマリオの姿勢にいたく感動、
是非にと、取引をお願いした次第なのです。

もちろん見る人が見れば足踏み式の手織り機でゆっくりと織られた高い技術であることはわかるのですが、
一見するとそれほどの変哲もなさそうな無地ライクなスカーフです。
ただ圧倒的に違うのはこのスカーフ一枚に至るまでのストーリーです。
この一枚のスカーフ(マフラー)を纏(まと)うこと、
それはそのストーリー自体を身に纏うことに他ならないのです。


websiteはこちら

さらに、有能なるツアーガイドの山下直子クンと
アイリッシュファッションに精通した私のアドバイザーMiwaさんが、
私の代わりに(と言ってもいいでしょう)、
ファクトリーを訪問してきてくれてますので、そちらもぜひご一読ください。
モーン・テキスタイルズの工房を訪ねる