クレオは1936年創業のダブリンの専門店。アイリッシュクラフトの宝石箱。1940年代からアラン諸島の編み手による珠玉のアランセーターを扱い続けている。アランセーターの黎明期を知る店であり、当主キティ・ジョイス(故人)からは拙著「アランセーターの伝説」を執筆する際、貴重な話を数多く取材させてもらった。多くのアランセーターが世界中に普及していくなかで、質より量を求める風潮からハンドニットのレベルダウンに疑問を感じたキティは、1940年開催の「アランセーター・コンテスト」に集まった50枚のアランセーター(現在その一部はアイルランド国立博物館所蔵)こそがアランセーターの最高峰であり、そのセーターのクオリティを維持し続けることが使命と、アラン諸島に限定せず広くアイルランド国内の優秀な編み手を募り、クラフトとしてもまたファッションとしても世界のトップレベルに通用するアランセーターを提供し続けている。編み柄はもちろん、スタイリングからリブ編みの先の細部に至るまで意匠を凝らしたクレオのアランセーターはエラボレート・アランElaborate Aran (elaborate＝凝りに凝った、の意)と称され、他のアランセーターとは一線を画している。
当店では2000年前後に少しだけ扱ったがレディスが中心でしかも相当に高価であったため、取り扱いを控えてきた。しかし、このセーターを日本で紹介できるのは当店以外にはないだろうと思いたち、現当主でキディの娘サラに申し入れたところ快諾を得て、2022年より取引を再開することになった。この貴重な珠玉のエラボレートアランをダブリンのクレオ以外で入手できるのはもちろん当店だけである。
