出来上がり紹介。スーツ、ジャケット、シューズ。

出来上がり紹介です。夏の終わり、というところでしょうか。

スーツとジャケットです。8月にスーツ・ジャケットを作ってくれたら優遇します、というメルマガメンバー限定のクローズドキャンペーンを行いまして、何人かが賛同してくれました。売上の乏しい8月なので、助かりました。

Kさんがご子息をお連れになり、この子に成人式&就活のスーツを仕立ててやって、というご依頼。
息子がいたらいつかは言ってみたいセリフ、私は娘二人だったので残念ながら言えずじまいでした。
生地は葛利の綾織ナチュラルストレッチの紺無地。今までに一体何人の人に勧めてきたのか、というほどの定番素材ですが、
初めの一着、として、これ以上適した生地はないでしょう、ということで、迷わずこの生地を選びました。
310gの秋冬モノに属する素材ですが、表面をミルド(起毛)してないし、葛利のションヘル織機ならではの空気をたっぷり含みながらゆっくり織ることで生まれるナチュラルなストレッチ感は、
スーツを着慣れないビギナーにとっては動きやすくしかも型崩れしにくくて、最適です。
ファクトリーは那須夢工房をおすすめしました。この上衿でおわかりですね。
那須のファクトリーは高い技術力にしては工賃がリーズナブルで納期もそんなにかからない(その代わりオーダーとしてイジれる自由裁量部分がとても少ないという制約があります)ので、
標準体型で比較的若年層の方が、いい意味で普通のスーツを、というときには、おすすめできます。


略礼服は何度も作ってますが、久しぶりに「ちゃんとした略礼服」をお作りしました。Fさんのご注文。
「ちゃんとした略式」というのも変な言い方ですが、
つまり、ディナースーツ(タキシード)やディレクターズスーツに転用が可能な略礼服、という意味です。
すなわち、シングルブレスト、ピークドラペル、1つボタン拝み式、(フラップなし)、ステッチなし、ノーベント、
ノープリーツ、(ベルトレス)、シングルモーニングカット、ということです。
今回はカッコを付けた2つについては、不祝儀時の着用を考慮して、フラップ付き(写真はフラップを収納しています)、ベルトループ付き(ただしベルトなしで着る場合を考慮してステイループ(バックルピン留め)は付けない)、に変更しています。
生地は、これも当店のロングセラー、葛利毛織のカシミア5%入り深黒朱子織り、黒の艶が一番良く出ます。
ファクトリーはアルデックス。Fさんからは以前にもスーツのご注文をいただいていますが、その寸法よりも少しずつ大きめ、いい意味で少しだけ野暮ったく、仕上げました。略礼服ですので、スタイリッシュになりすぎないように、また着用年数も普通のスーツよりも長くなりますので、万一の体型変化にも対応しやすいように、という配慮です。
フォーマルウェアは、普段のスーツよりもイジれる部分が少なく、決まりきった形になるので、既製服でも対応はできるのでしょうが、
フォーマルウェアに一番必要な「着方」をアドバイスしながらお作りしていく、というのは、オーダーでないとできないことではないでしょうか。
ご葬儀や祝宴などに臨席すると、礼服をきちんと着られていない方をたくさん見かけます。こちらから指摘するような野暮な真似はいたしませんが、困るのは、向こうから「野沢さん、プロから見て私のこの着方でおかしくないよね」と尋ねられることです。万一おかしなところがあったとしても、そこでダメ出したところでその場で直せるものではなく、相手に恥ずかしい思いをさせるだけですので、絶対にダメ出しができません。濁した言い方しかできないので困ります。
フォーマルを着るときに一番大事な心構えは、不安なく自信を持って着る、ということに付きます。
そのお手伝いはお任せください。
話が長くなっちゃったな。次行きます。


Nさんから、長く愛用してきたアイリッシュリネンの紺のジャケットが、さすがに傷んできたので、そろそろ買い替えたい、というご要望をいただきました。
運よくバラケの生地に、Spence&Brysonのアイリッシュリネンの綾織で、明るめの紺無地がありましたので、
迷わずこれを注文しました。
ちなみに、Spence&Brysonはしばしばアイルランド製、と言われますが、
Spence&Brysonの発祥地も現在の織元であるUlsterWeaversも、アイルランド島のアルスター地方、すなわち、北アイルランドに属するので、
正確にはUK,つまり英国製になります。
打ち込みのしっかりした綾織のアイリッシュリネンなので、結構重たいし、通気性もそれほどではなくて、
リネンと言っても決して涼しいという感じではないのですが、
それこそがNさんが長年の愛用品の買い替えとして求めていたモノなのでした。
一年ぐらい着込まないと味が出てこない、これぞアイリッシュ・リネン、であります。
これも那須夢工房に縫製を依頼しました。プレスワークを多用し、肩から首周りの収まりが美しい那須ならではのフィット感です。
同時に頼んだのが、黒のリネン無地のトラウザーズ。こちらは、国産の平織りで軽量、気軽に使える素材を選びました。

続いては、靴を作ろう!!キャンペーンの仕上がり、後半です。

Iさん、10年以上前に作ったダブルモンクがさすがに傷んできたので、作り替えです。
以前は無料でできたストラップのゴム入れですが、今は有料になっていまして、ごめんなさい、です。
でもモンクシューズのストラップは壊れたら靴全部がオシャカになってしまうので、
なるべくならいじらないほうがベターでして、有料でもゴム入りに変更することをおすすめしています。


Sさんのセミブローグ、すべてにブローグが付きメダリオンも付いていて、これを「セミ」と呼ぶのもなんだかなぁ、と思うのですが、フルブローグ(いわゆるウイングチップ)と区別する意味でセミブローグ(いわゆるストレートチップ)と呼びます。フルブローグよりもセミブローグのほうがビジネス寄りなので、お仕事用としてはセミのほうが人気があります。
実はこの靴も、買い替えです。Sさん、10数年前に作った靴を何度かリペアをしながら履き続けてきましたが、今回宮城興業にリペアとして送ったところ、バラしてみたら相当傷んでいて、直せなくはないけれど新たに作るよりも高くつくし、サイズも少し小さくなる、との見積もりが出てしまったので、リペアを諦めて同じものを一足作ることになったものです。

こちらも同じSさんのオーダー。ちなみに、同じ人が同じサイズで複数足をご注文される場合、
同じサイズのラスト(木型)を一人で2足使ってしまうと、万一そのラストに別の方から新たな注文が入るとラスト不足になる恐れがあるので、それを避けるために一足ずつ作ることにしています。これを、ラストの回転待ち、と呼びます。Sさんの場合も同様で、概ね納期が3週間ほどズレます。
今までよりも少し趣を変えたい、というご希望でしたので、
デザインをサドルシューズにして、革も型押しの革を使って、少し野趣っぽくしてみました。


サドルシューズといえばコンビが適してます。サドルシューズがきれいに3分割のできるデザインだからですね。
Yさんからのご注文です。前部分と後ろ部分とベロ、これが型押しのブラウン、真ん中のサドル部分とかかとのバックステイをベロアのタバコカラー、で色分けしました。スポーティさを出すため、底部分の色合いは薄茶色にしました。Yさん、コンビのサドルだけで一体何足お持ちなんだろうな。

ということで夏の終わりの出来上がり紹介でした。
次回の出来上がりは、いよいよ「シャツを作ろう!!~エコノミーサービス」のご紹介となります。