オーダーシューズ・ベルト

2004年7月より、ショップブランドでのパターンオーダーという形態で紳士靴(同じ革を使ったベルトのオーダーも)を始めました。  (その当時の経緯については、倶樂部余話【187】をご覧下さい。)

説明の順番としては、最初にこのシステムを作り上げた宮城興業の話からするべきなのですが、それは後でお話しするとして、まずは、肝心の靴そのものの注文の手順などから、お話ししましょう。

ここでは、要点のみかいつまんで説明しますので、もっと詳しく知りたい、という方は、宮城興業のサイトも併せてご覧いただくことをお薦めします。

★サイズ…「サイズの合わない靴はお薦めしない」が当店の方針ですから、サイズ合わせは念入りに行います。

適応足長は22~30㌢の17種、これに足幅がD,E,2E,3E,4E,Fとそれぞれ6種ありますから、17足長x6幅=102通りのサイズが準備されています。

この102通りのサイズの中で当店では60足のサイズゲージ靴を用意しています。このゲージ靴を試し履きしていただきながら、お客様にふさわしいサイズを決めていきます。左右違うサイズもOKですし、さらに甲高や外反母趾などの微調整もラストへの「のせ甲」で対応します。

★ラスト…ラスト(木型)は、ラウンドトゥ(エッグトゥ)とチゼルトゥ(チゼル=鑿(のみ)のこと)の2種。

そして、基本デザインとして43種のデザインを用意しています。(発売当初はこのデザインはラウンドだけとかこっちのデザインはチゼルのみ、と、分かれていたのですが、現在は相互乗り入れが可能となり、概ねどのデザインもどちらのラストでも対応できるようになりました。これはとても画期的な進歩なのでした。)

さらに、2007年秋から、第3のラストが登場。米オールデンをリスペクトした「宮城デン」MDの12型が加わりました。また、他にレザースニーカー2型もできます。
ラウンドトゥ

チゼルトゥ

宮城デン

 

レザースニーカー

★デザイン…さて、皆さんが一番興味のあるのは、一体どんなデザインが選べるのか、ということだと思います。じっくりと悩んでいただくのはいいのですが、43種類もあると、どれに決めていいか、訳が分からなくなってきてしまうかもしれません。

以下のリンクからご覧下さい。それから、有料にはなりますが、ココにこんな飾りを付けたい、とか、逆にココの飾りはいらない、といったような、パーソナルなデザイン変更もかなりの範囲で受けることができますので、相談してみて下さい。

☆ラウンドトゥ(ES)…30型 (ファクトリーのサイト)

(↑↓デザインとラストの相互乗り入れが概ね可能)

☆チゼルトゥ(CS)…16型 (ファクトリーのサイト)

☆宮城デン(MD)…12型 (ファクトリーのサイト)

☆レザースニーカー(ODSN)…2型(ファクトリーのサイト)

★素材…革の種類も豊富です。カーフ(正確にはキップ)、ステア、型押し、ロウ引き、オイルド、スウェード、ベロア、ヌバック、いろいろです。焼き焦がし色だってあります。

そして、有料オプションとして、アノネイのカーフ、なんかも常時配備しています。

革の見極めはなかなか画像で伝えることは難しいですね。やっぱり実際に見ていただかないことには…。

★ソール&ヒール…ソールは、革底が基本です。厚底(ダブルソール)も可能です。溝伏せもできます。また、革底以外にも、ダイナイト風スタッズソール、クレープソール、レンガソール、などの選択肢があります。
ヒールの仕上げ(化粧)は安全上ラバーヒールを推奨いたしますが、ご要望に応じてレザーヒールへの変更や釘打ち追加などが可能です。

★ウェルト&コバ形状…靴の表情を大きく左右するのが、ウェルトとコバの選択です。スッキリとシンプルな靴にしたいのか、それとも、どこにもない個性的な靴にしたいのか、はウェルトとコバをどうするか、にかかってきます。例えば「薄茶の靴に、ウェルトは赤茶のストームウェルトを踵までダブル巻き、更に後から手で目付入れ。出し糸は白ね。コバは全丸で更にフマズ丸に攻めて…」なんてやると、とてつもなく個性的に靴が出来上がります。(例えば、の話ですよ、決してお勧めはしません。)

★リペア…グッドイヤーウェルテッドですので、3-4回はソール交換が可能です。
リペアの際には、作ったときのオーダーシートの写しを添えてファクトリーに送ります。そうすることで、作った同じ工場で、同じラストをはめて、同じ工程で同じ素材でやり直す、という、これ以上ない理想的なリペアができるわけです。また、革底で作った靴をラバー底に張り替えて、雨天専用の靴に格下げする、なんていう芸当も可能です。

★価格と納期…価格はおおむね3万円代後半です。

①国内製造だから関税も運賃もかからず、②工場との直接取引なので中間マージンがかからず、③注文靴なので、売れ残りの損を見込まなくて済む、といった理由がこの価格を実現させています。

(販売開始から10年以上経過し、このシステムを導入している店舗は当店だけではなく、全国に広がりましたが、それぞれがその店独自の工夫やアレンジをして、価格を設定しています。いわば同志とも呼べるこれらのお店と無用な諍いの起きることを避ける意味で、具体的な価格表示はここではいたしません。何卒ご理解下さい。)

納期は、工場の混み方にもよりますが、原則的に1ヶ月強をいただいています。工程だけ考えると一週間でも決して不可能ではないはずですが、革靴の場合、各工程で革をなじませるためしばらく寝かすということも必要な場合もありますので、早けりゃいい、というものでもないらしいのです。
また、まれに「ラストの回転待ち」という事態が発生します。靴は服の型紙と違って製造工程中ずっとラストをはめたままで進行しますので、たまたま運悪く同じサイズの人の注文がたくさんになってしまうと、前の注文のラストが空くまで次の人の製作に取りかかれないのです。
一ヶ月をいただいているのは、そういう理由によるものですので、どうかご了解下さい。

★靴についての倶樂部余話バックナンバー
靴についてはいろいろと書いています。
倶樂部余話【333】英式ナマケモノの靴(2016年6月26日)
倶樂部余話【297】 英なギリー米なサドル (2013.07.03)
倶樂部余話【271】 靴もベルトも服のうち? (2011.6.15)
倶樂部余話【259】 ジョージ・クレバリーでの出来事(2010.6.23)
倶樂部余話【258】 はじめの一歩(2010.5.20)
倶樂部余話【246】 靴とセーター、作ろう!(2009.7.1)
倶樂部余話【234】 服屋から靴を考えてみると…(2008.7.1)
倶樂部余話【222】 宝の持ち腐れ(2007.7.1)
倶樂部余話【209】 夜行バス朝湯付きの工場訪問(2006.6.1)
倶樂部余話【187】 紳士靴を二年ぶりに再開します(2004.7.14)
倶樂部余話【164】 紳士靴をしばらくお休みします(2002.8.26)

ファクトリーについて

さてさて、この注文靴を仕掛ける宮城興業の話です。倶樂部余話【187】でも触れていますし、まただらだら語っていると長くなりますので、いきなりズバリと断言しますが、技術、感覚、経営、規模、どれもバッチリのところなのです。

※技術…ただ義務的にモノを作っても、いいモノはできません。熱い「心意気」が大切なのです。(だれも真似のできないこの誂え靴のシステムは心意気がなければ実現してません)
※感覚…モノが良くてもオールドファッションじゃ困ります。最新のファッション感覚を捉えているということも大切な要素です。(U.AローズやSップスのショップ別注から、Eトスクラブ、Aルフレッド・BニスターやT原啓などの新進個性派デザイナーものまで、手掛けています)
※経営…いいモノが作れても、経理がいい加減だったり、借金まみれですぐにつぶれてたりしてしまっては元も子もありません。(さすが米沢藩、上杉鷹山の教えどおりの70年の堅実経営)
※規模…生産現場の規模も大切です。大きすぎたら目が届かないですし、小さすぎるとちょっと注文が増えただけでアップアップの空中分解になりかねません。(社長との会談中も、しょっちゅう職人さんが靴を持って「ここはこの仕上げでいいですか?」と確認に出入りしていた)

はい、充分に信頼に足る会社であると確信しました。

実際に工場へ伺ったときの印象を少しお話ししましょう。

仕事柄私も今までいろんな工場を見てきています。服飾関係や眼鏡、靴など、また海外であったりと、必ずしも専門知識を持っているジャンルばかりではありませんが、私がどんな工場見学でもチェックするポイントは次の三つです。
※整然さ…新しいか古いか、とか、雑然としているかすっきりしているか、ということではなく、床に余計なものが転がっていたり、すきま風が吹き込んだり、じめじめとほこりっぽかったり、など、働く環境としてどうか、という点です。
私が驚いたのは、この工場には革のくずが全くと言っていいほど床に落ちていないということです。聞けば、ここでは、たくさん出る革くずをゴミにしないで集めて四国へ送り、それを粉砕してコルクと混ぜて中敷きの素材に加工してもらい、またこの工場へ戻してもらう、というとても面倒な手順を実施しているといのこと。
革には鉛やクロームなど有害物質が使われていることも多いですから、このようなリサイクルで環境への配慮をしている点は評価できます。また、この革くず入りのコルクは、単にコルクだけのものよりも、吸湿性や耐久性に富んでいる、というメリットもあるのです。
※従業員の姿勢…製造の現場を訪れると、往々にしてあるのが、経営者と従業員、または、営業と製造、との敵対関係。これはいくらトップが取り繕っても工場内の雰囲気でわりとすぐに分かってしまうものなのです。
その点ここは、会う人会う人、おじさんもおばさんも、みんなにこにこと「こんにちは」で、ありきたりの言い方ですが、とっても家族的、でした。親子二代に渡ってでここに勤めている、という人も何人かいて、そういうのはなんだか英国的だな、と感じました。
※検品…どんなに気を付けていても人間は必ず間違えるもの。だから検品という作業はとても大切で、これをおろそかにしているところは、怠慢と言われても仕方ありません。
言わずもがなですが、ここには何重もの検品システムがしっかりと出来ていました。

この宮城興業、今までは黒子的な存在で、知る人ぞ…、のところでしたが、恐らく、この誂え靴のシステムが普及するにつれ、雑誌などで紹介される機会も増えることでしょう。ここで多くを語るまでもなく、具体的な会社案内は今後のそれらへの露出に譲ることにしたいと思います。

やっぱり長くなってしまいましたね。

私は、何万円も何十万円もする、イタリアや英国の高級輸入靴を否定するものでは決してありません。それらはひとつひとつすべてに理由のあるすばらしい靴だと評価していますし、私自身もいくつかは愛用しているものもあります。また、履かずにただ工芸品として飾って見ているだけでもいい、という「思い出消費」があってもそれはそれでいいと思います。

私たちの提案は、それらを否定しているのではなく、並列しているというか、一方に名前の通った高価な輸入靴があり、他方、こういう考えの靴が存在していてもいいのではないか、と考えています。10万円の靴ばかりを毎日とっかえひっかえ履くことのできる人の数は限られているのですから、すばらしい靴は靴として所有しながらも、でも日常の生活の中で、疲れなくて格好良くて自分の思い通りのスタイルの靴というものもやはり必要な存在ではないか、と考えるのです。

私たちの商売は、突き詰めると、「出会い」がすべて、というところがあります。宮城興業と出会えたこと、それが私にとってどれだけの喜びであったか、そのことがちょっとは伝えられたかな、と思っています。